瀧廉太郎の墓（龍泉寺）

『荒城の月』の瀧廉太郎が眠る龍泉寺の墓は、石碑の刻字と周囲の静けさが主役。花よりも“時間の手触り”を撮る場所で、雨上がりは石が黒く締まり苔の粒が立ちます。春は若葉、秋は落ち葉が足元を染め、冬は空気が澄んで線が端正。50mm前後で碑を正面から、寄りで欠けや水滴、香の煙を丁寧に。少し引いて境内の木立や石段を入れると、旋律の余韻が風景として残る。露出は白い刻字が飛ばないよう控えめに、静音で撮ってその場の空気を壊さないのが大人の作法です。曇天はコントラストが落ちて石の階調が出やすい当たり日。モノクロにすると文字と影だけが残り、音が聞こえるような一枚になります。