反古塚

谷川神社の境内にひっそり盛られた小さな塚と石碑は、国学者が草稿を埋めたという逸話をそのまま“静物”として撮れる場所。春は若葉の反射で石が柔らかく、梅雨は苔と濡れた刻字がくっきり、秋は落ち葉が前景のテクスチャになる。標準で塚と社叢を端正にまとめ、中望遠〜マクロで万葉仮名の刻み、欠けた稜線、石の粒立ちを丁寧に。曇天は階調が素直で、夕方の斜光は文字の影がいちばん深い。人物は入れず余白を残すと“後世に残す意志”が伝わる。モノクロにして質感と形だけに絞るのも相性抜群。雨上がりはPLで反射を整え、三脚で低ISOにすると石の階調が粘る。静かな場所なのでシャッター音も控えめに。