無動寺

無動寺は、三重の山あいにひっそり建つ小さな寺で、苔むした石段と素朴な本堂が“無動”という名の通り静かな画を生みます。春は山桜と新芽、夏は深緑、秋は紅葉と落ち葉のじゅうたん、冬は霜や薄雪が足元に季節を刻みます。35mmで参道の奥行きを押さえ、85mm前後で仏像や木彫、賽銭箱の角の丸みを寄りで撮ると“時間の蓄積”が写ります。曇天や小雨の日は、少しアンダー目の露出と彩度控えめの現像で、山寺のしっとりした空気を丁寧に描きたい場所です。鳥の声と風の音しか聞こえないような環境なので、自分の足音も絵作りの一部だと思ってゆっくり歩きたい寺です。