伝香寺

ならまちの細い路地を抜けた先に現れる伝香寺は、地蔵菩薩立像とはだか地蔵、そして奈良三名椿「散り椿」で知られる小さな寺。春の椿は花ごと落ちず一枚ずつ散るので、苔むした石段や飛び石と組み合わせると点描画のようなカットが撮れます。本堂は奇棟造の端正な屋根が美しく、広角で山門からの奥行きを、標準で木組みと障子の陰影を、望遠で衣をまとった地蔵さまの穏やかな表情を。夏は青もみじ、秋は落葉が畳を彩り、早朝や雨上がりは観光客も少なく、露出を少し落とせば静かな時間がそのまま写り込み、手持ちでも十分楽しめる明るさです。