橋野鉄鉱山

橋野鉄鉱山は、苔むした石組みの高炉跡が森に沈む産業遺産で、石と緑のレイヤーがとにかく美しい。曇天や小雨の日ほど階調が豊かに出て、広角で遺構の輪郭と森林の厚みを入れるだけで雰囲気が出る。望遠で石の積み肌や崩れた角、鉄の痕跡を切り取ると“時間の侵食”が写る。秋の紅葉、冬の薄雪は石の形を際立たせる季節。世界遺産の構成資産としての重みもあり、露出を少し落として暗部の粘りを残すと重厚にまとまる。人を小さく入れるとスケールも明快で、静寂を壊さない撮り方が似合う。霧が出る朝は輪郭がふっと浮き、まるで遺構が森から現れる瞬間を撮れる。