
ソニー 1億画素の正方グローバルシャッターのインパクト
「1億画素で毎秒100枚、しかもグローバルシャッター」。数字だけ見ると、次世代のシネマカメラか、未来のスポーツ機材の話に聞こえる。実際の主戦場は撮影現場ではなく、工場の検査ラインとなる産業用です。ソニーが公開しているこの産業用イメージセンサーIMX927/IMX937の情報は、マシンビジョンの都合を真正面から突き詰めた“超現実的な進化”です。今回はスペック羅列で終わらせず、「なぜこの仕様なのか」「写真・動画ファンにとって何が面白いのか」を解説します。
この記事のサマリー

ソニーIMX927/937は1億画素×100fpsの産業用GS。100Gbpsで現場が変わる。

正方10K級のグローバルシャッターがAOI/3D検査を加速。I/Fと実装が鍵。

IMX927は高速・多レーン、IMX937は同画素で半速。用途別の選び方が見える。
IMX927/937は“フルサイズ級の面積”を正方形で使う産業センサー

IMX927とIMX937は、どちらも対角39.7mm(2.5型)で、画素数は10,272×10,272の約1億551万画素。つまり“正方形の10K級”を、グローバルシャッターで読み出す設計です。
面白いのはサイズ感で、対角39.7mmはフルサイズ(対角43.3mm)にかなり近いです。縦横は約28mm角相当になるため、面積で見てもフルサイズに迫る。ここまで大きいと、マシンビジョンの世界でも「1台で広い範囲を、高精細に、歪ませず撮る」方向に振り切ったセンサーだと分かります。
なぜ“1億画素×100fps”が必要?AOIと3D検査の現実は、想像より苛烈
ソニーの説明は明快で、工場自動化が進み、高速かつ高画質で撮れるビジョンカメラ需要が増えていることが前提にあります。
AOI(自動光学検査)や3D-AOIは、止まらないラインの上を流れる部品を、短時間で大量に撮って判断できる。ここで厄介なのが、ローリングシャッター特有の歪みだ。露光が行ごとにズレると、寸法や位置を見誤るリスクが増える。グローバルシャッターは、画面全体を同時に露光・読み出しする方式なので、動体歪みの回避に向く。これはソニー自身の技術解説でも強調されています。
そして1億画素は“贅沢”ではなく、検査は「見落とさない」ことが最優先です。微細な欠陥、微妙な段差、反射のムラ。画素が増えるほど、同じ視野でも情報量が増え、判定の材料が増える。さらに3D計測(Structured lightや光切断法)では、短時間に複数フレームを確保したい。だから100fps級が効いてきます。
センサーだけ速くても意味がない。100Gbps級I/FとSLVS-ECが“ボトルネック”を潰す
ここが本題と言っていい。1億画素を100fpsで吐き出すなら、データは天文学的に増える。ソニーはページ内で、100Gbpsのデータ転送に対応すると説明しています。
さらに、CoaXPress-over-Fiber(CXPoF)や100GigEといった次世代高速カメラインターフェースへの対応も明記されています。現場ではケーブル長や安定性も大問題で、単に“速い”だけでなく、長距離・安定伝送まで含めた設計思想が見える。
加えて重要なのが、センサー出力のSLVS-EC。最大12.5Gbps/lane対応で、同じデータ量なら必要なレーン数を減らせるため、FPGA選定の自由度が増す、という説明です。単なるスペック自慢ではなく、「カメラを作る側の苦しさ」を理解している文章になっている。
2.74µmで“画質”を語れる理由。Pregius Sの文脈で読む
グローバルシャッターは画質が不利。このイメージは、長く業界に残ってきた。そこでソニーが前面に出すのが、独自のグローバルシャッター技術Pregius / Pregius Sだ。Pregius Sは、裏面照射構造や積層構造で小型化・高速化と性能維持を両立させる狙いがある、と技術ページで説明されている。
IMX927シリーズでは、裏面照射型画素+積層構造により、2.74µmでも高感度・飽和容量を備えるとされる。半導体や精密機器、ディスプレイなど、被写体側の条件が厳しい領域を見据えた説明です。さらに、フレームレートや解像度を維持したままダイナミックレンジを広げる1-shot HDRも用意され、金属とゴムのような反射率差が大きい対象に効く、と明記されている。ここが“検査向けのHDR”らしい。
IMX927とIMX937の違い。同じ画素数で速度と構成の選択肢が変わる
読者が一番検索しそうなポイントを、端的にまとめました。
比較項目 | 内容 |
|---|---|
画素数・サイズ | 同じ。どちらも2.5型(対角39.7mm)、有効約1億551万画素。 |
速度(フレームレート) | 異なる。IMX927は10bitで102fps、IMX937は10bitで51fps。実効的に約半分の差。 |
レーン構成の自由度 | 異なる。IMX927は「×2」構成を含む多様なレーン構成に対応。IMX937は2 / 4 / 6 / 8 Laneの構成。 |
仕様から読み取れるのは「最速・最大構成のIMX927」と「要求仕様を満たしつつシンプルに組みたいIMX937」という二択を用意した、という設計思想です。
地味だけど“現場を救う”新パッケージ、センサー交換が前提の時代へ
IMX927シリーズは、コネクター付きセラミックパッケージを全タイプ共通で採用し、全16製品がピン互換。設計共通化とセンサー交換の容易化、組立性の向上、放熱設計まで一気に面倒を見る。
カメラ好きの世界に引き寄せて言うなら、「同じボディでセンサー違いを差し替える」発想に近い。もちろん民生機でそのままは起きない。でも、工場では“止めない”ことが正義で、交換やメンテが速いほど価値が出る。派手な画素数より、こういう思想が一番リアルだ。
過去の流れ:Pregius Sは“高速と低ノイズ”をずっと積み上げてきた
このIMX927/937は突然変異ではない。たとえば2024年のIMX925では、約2455万画素で394fpsという、速度に全振りした方向性が示されている。そしてIMX927は、速度を“ほどほど”に抑える代わりに、1億画素クラスを100fpsへ持ってきた。つまり同じ「高速化・高精度化」という大目的の中で、解像側と速度側の両端をラインアップで押さえています。
競合・市場動向:“グローバルシャッター”は工場だけの言葉ではなくなった
市場として見ると、グローバルシャッターは明らかに熱を帯びています。象徴的なのが、ソニーのミラーレスα9 IIIです。ソニー公式の技術ストーリーでも、α9 IIIを「グローバルシャッター方式フルサイズイメージセンサーを搭載した世界初のレンズ交換式ミラーレス」と位置付け、ローリングシャッター歪みなどの課題を“同時露光・同時読み出し”で解決する文脈を語っています。
ここで誤解してほしくないのは、IMX927/937がそのまま次のαに載るという話ではないという点。ただし、産業と民生で“グローバルシャッターの必要性”が同時に高まっているのは事実で、技術の投資が強くなるほど、波及の余地は広がります。
まとめ
IMX927/IMX937は、スペックの派手さに目を奪われがちですが、真骨頂は「工場の時間を止めない」ための総合設計にあります。1億画素×100fpsを支えるI/F、HDRやビニングの“現場向け機能”、ピン互換パッケージのメンテ性。どれも、撮影機材のロマンとは別の場所で、確実に世界を前に進める技術です。カメラ好きとしては、その成果がいつ、どんな形で撮影の世界に流れ込むのか、そこまで含めて、追いかける価値があります。
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