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グローバルシャッターとは何か?搭載カメラの比較からデメリットまで徹底解説
高速で動く被写体が「斜めに曲がる」「羽根が歪む」といった課題への解決策の一つがグローバルシャッターです。24年にSony α9 IIIが世界初のフルサイズグローバルシャッター搭載ミラーレスを発売し注目が集まり、今後はより広く静止画機にもグローバルシャッターの搭載が広がることが予想されています。

この記事のサマリー

グローバルシャッター(GS)は全画素同時露光でローリング歪みを原理的に抑制。LED由来の縞やフラッシュバンドも出にくい。

構造上ベースISOが高めになりやすく、DRや高感度ノイズで不利になる場面がある。価格帯も上位に集中しがち。

GS搭載機材の代表例は静止画 ソニーα9 III、シネマ RED V‑RAPTOR [X]など。

現場の初期設定目安(スポーツ1/2000、屋内1/1000、LED環境1/500など)と日中シンクロ運用の注意点を提示。
そんな注目度が高まるグローバルシャッターとは何なのか実際のメリット・デメリットも合わせて解説していきます。
グローバルシャッターとは
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グローバルシャッター(GS)を一言で表すと、センサー上の全画素を同時に露光する方式です。グローバルシャッターは設定で有無を変えられるわけではなく、カメラ機材ごとに搭載有無が決まっているので、カメラ機材選びに影響を与える要素です。
行ごとに時間差を伴って露光・読み出すローリングシャッターと異なり、露光タイミングのズレが原理的に生じません。結果として動体歪みやフラッシュバンド、LED由来の縞が発生しにくくなり、形状の再現性が高まります。
同時露光の要点:歪みの根本原因を断つ
従来のローリングでは画面の上端と下端で露光開始時刻が異なるため、移動体は傾いたり伸び縮みして写ります。グローバルシャッターは全画素を同一時刻に露光し、その後順次読み出しても「写した瞬間」がフレーム全域で一致します。プロペラやクラブなど高速運動体の形状保持に有効です。
照明環境でも利点があります。LEDの点滅周期と行走査が干渉して発生する縞は、同時露光でフレーム内の明るさが揃いやすくなり可視化しにくくなります。室内スポーツや舞台、サイネージのある空間でも統一感のあるカットを得やすくメリットを感じやすいです。
ローリングとの見分け:現場チェックのコツ
扇風機の羽根や自転車ホイールを横振りで撮ると差が分かりやすく、ローリングでは楕円化や傾きが出やすいのに対し、グローバルシャッターでは形状保持が安定します。LED看板を高速シャッターで撮り、縞の有無・出方を比較するのも判断材料です。
動画でも同様です。パン時の縦線の湾曲や「こんにゃく」的歪みが抑えられ、ショット間の整合性が取りやすくなります。スタビライズやVFXのトラッキングも破綻が少なく、後工程の負担を軽減できます。
グローバルシャッター誕生の経緯
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グローバルシャッターは、もともとCCDセンサーのインターライン転送方式に由来し、露光を全画素同時に終了させる「電子的グローバル露光」が原点でした
CMOS化の波の中でAptinaやSonyが画素内メモリを用いた方式を開発し、2013年に登場したSony IMX174が高画質とグローバルシャッターを両立した最初の実用的センサーとして評価されます。ここからが一般的にもグローバルシャッターが認識される始まりです。
その後はソニーPMW-F55やキヤノンEOS C700 GS PLなどが映像業界に導入され産業用からシネマ機材まで普及が進みました。そして24年にSony α9 IIIが世界初のフルサイズグローバルシャッター搭載ミラーレスを発売し、静止画においてもグローバルシャッターの評価が高まりました。
グローバルシャッターのメリット:動体・照明・ストロボに強い
グローバルシャッターの価値は、失敗ショットを減らせる点にあります。高速被写体の形が崩れにくい、LED下で縞が出にくい、ストロボ同調の自由度が高い。これらが同時に効くと歩留まりが上がります。
動体歪みを原理的に抑制:決定的瞬間を形のまま固定
野球のフルスイング、モータースポーツのホイール、ラケットスポーツのシャトルなど、形状破綻が出やすい被写体でも輪郭が保たれます。AFや連写性能に加えて、センサー起因の歪みが抑えられること自体が安心材料になります。
パンやクイックズーム時も直線が保たれやすく、建築の柱やフェンスなど直線要素の多い場面で有利です。後からの歪み補正に頼るより、撮影段階で歪ませない方が画質劣化や時間的コストを抑制できます。
照明・フラッシュに強い:フリッカーと同調の自由度
同時露光はLED照明の点滅周期起因のバンディングを抑えやすく、体育館やコンサート会場でも使えるカットの割合が上がります。露出のムラが減ることでカラーグレーディングも安定します。
ストロボ同調の自由度も高まります。全画素同時露光により、対応フラッシュの組み合わせでは高速シャッターでもフレーム全域を照らせます。ただし閃光時間や出力の制約上、超高速域では実効光量が低下する点は織り込みが必要です。
グローバルシャッターのデメリット:感度・解像・価格の現実
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ここまでメリットを紹介しましたが、実は万能ではありません。画素内に記憶ノードやスイッチを設ける構造上、受光面積が相対的に減り、同世代のローリング機よりベースISOが高めになる傾向があります。低感度域でのダイナミックレンジや高感度ノイズは事前確認が必要です。
感度・ダイナミックレンジ:露出設計の見直し
暗部の粘りはローリング上位機が優位な場面もあります。GS機ではETTR寄りで撮り、後処理でハイライトを調整する運用が有効です。ノイズリダクションはディテール保持重視の設定を選ぶと破綻を抑えやすくなります。
動画では照明追加の判断が鍵です。ISOで稼ぐより、キーライトやフィルを足してS/Nを確保する方が安全です。必要なシャッター速度は確保しつつ、光量で画質を守る発想が有効です。
解像・価格・処理負荷:導入時の落とし穴
現行のグローバルシャッターは速度優先の設計が主流で、超高画素の風景・商品ではローリングの高解像モデルが依然有力です。用途で機材を使い分ける判断が必要になります。価格帯も上位に集中しがちです。
高速連写や高ビットレート動画ではデータ量が増加します。記録メディアやストレージ、PC側の処理能力、バックアップ体制まで含めた総所有コストを見積もると失敗を避けやすくなります。
グローバルシャッター搭載機材の代表格を紹介
グローバルシャッターを搭載したカメラは、今では静止画・動画の両分野に広がっています。ただし、その性格は用途によって異なります。静止画向けは高速連写・フラッシュ同調・動体歪みのない撮影を重視し、シネマ向けはトラッキング精度やVFX合成、LED照明下での安定性を重視しています。
Sony α9 III:世界初のフルサイズグローバルシャッター搭載ミラーレス
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まず静止画分野ではソニーα9 IIIが象徴的な存在です。2024年に発売されたこのカメラは、世界初のフルサイズグローバルシャッター搭載ミラーレスとして大きな話題を呼びました。最大120コマ/秒の連写、そして対応フラッシュとの組み合わせで全速同調(最大1/80,000秒)に対応するという性能を実現。スポーツ報道やイベント撮影などで“決定的瞬間を歪みなく切り取れる”機材として位置づけられています。ただし、ベースISOが250前後と高めなため、ダイナミックレンジや高感度ノイズでは従来のローリングシャッター機に一歩譲る場面もあります。
RED KOMODO 6K:動画・シネマの分野を牽引
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動画・シネマの分野では、RED社がグローバルシャッター技術を牽引しています。RED KOMODO 6KはSuper35サイズのセンサーを採用し、6K解像度・グローバルシャッター・小型筐体という組み合わせでVFXやドローン撮影に最適な一台です。さらに上位機種のRED V-RAPTOR [X] 8K VVはラージフォーマットセンサーでグローバルシャッターを実現し、8Kの高解像度と17+ストップのダイナミックレンジを両立しています。
Canon EOS C700 GS PL:報道やスポーツ中継といった高速度撮影に対応
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キヤノンのEOS C700 GS PLはSuper35サイズの4.2Kグローバルシャッターセンサーを搭載し、報道やスポーツ中継といった高速度撮影に対応。ソニーPMW-F55はシネマ用として早くから電子グローバルシャッターを実用化したモデルで、映画制作現場でいまだに高い評価を受けています。また、Blackmagic Production Camera 4Kは比較的低価格帯でグローバルシャッターを体験できる一台として注目されました。
グローバルシャッター搭載機材の比較
どの機材を選ぶかは目的次第です。スポーツや報道など動体重視の静止画撮影にはソニーα9 IIIが最有力。映像制作ではKOMODO 6KやV-RAPTOR [X]が最先端を行きます。LED照明下での安定性を重視する場合や、トラッキング精度が求められる映像制作ではシネマ機が優位です。
グローバルシャッターは万能ではありませんが、動体歪みやフリッカーを「原理的に避けられる」という特性は、これまで不可能だった表現を可能にしています。
ジャンル別の設定:グローバルシャッターの活用
GSの本領は「速さ」と「安定」です。被写体や光源に応じて、シャッター速度・絞り・ISO・同調・AFエリアの配分を最適化しましょう。以下は実際のケースで使い始めやすい初期値の目安です。実写で微調整し、歩留まりを上げます。
スポーツ・モータースポーツ・野生動物
屋外の球技は1/2000秒、屋内は1/1000秒から開始。ISOは上げすぎず、絞りはF2.8~4でAFに十分な光量を与えます。AF‑C+被写体認識+ワイドゾーンで追従を安定させ、連写は「狙いどころ」で集中的に使うと選別効率が上がります。
モータースポーツの流し撮りは1/60~1/125秒に落として速度感を演出。GSなら車体やガードレールの直線が保たれやすいのが利点です。野生動物は1/1600秒を起点に、被写体の動きに応じて調整します。
舞台・室内スポーツ・ストロボ併用
LED環境は1/500秒前後から試し、露出はややプラス寄りで安定化を図ります。WBはプリセット固定かケルビン指定で一貫性を確保。動画は180度ルール(シャッター角)を基準に、モーションブラーの質を見ながら調整します。
日中シンクロでは高速シャッター+開放絞り+フラッシュで背景を抑え、被写体を立たせやすくなります。高シャッターではフラッシュの実効出力が下がるため、発光量・距離・ISOのバランスを詰めると安定します。
効果を体感する検証手順:手元でできる“GSの効果確認”
購入前後にローリング機と同条件で撮り比べると、GSの価値が明確になります。屋外・屋内それぞれで、歪み・フリッカー・同調の3点をチェックし、等倍確認とメタデータ分析で差を言語化しましょう。
屋外テスト:動体とパンで形が崩れないか
自転車のスポークや通過車両を画面端から端へパンしながら連写。1/2000秒から始め、輪郭と縦線の保たれ方を比較します。流し撮りは1/60秒まで落として直線の保持を確認します。
結果は等倍で見比べ、ローリングで傾きが出ていないか、GSで直線が保たれているかを確認。同一レンズ・同一距離で撮り、パン速度は動画からの切り出しで揃えると公平です。
屋内テスト:LEDとストロボで“縞”と“ムラ”を見る
LED照明下で1/1000秒前後に設定し、均一面を撮影して縞の有無を比較。続いてストロボを用い、狙いのシャッターでフレーム全域が均一に光るかを確認します。露出のバラつきも記録しておくと再現性検証に役立ちます。
動画では電子看板やモニターを入れてテストし、ローリング補正の必要性がどれだけ減るかを体感します。差が出た理由を設定と光条件に紐づけて記録すると、現場応用が容易になります。
まとめ
グローバルシャッターは「歪み」「縞」「同調」に関わるストレスを大きく抑え、決定的瞬間を形のまま捉える有力な選択肢です。一方で感度・ダイナミックレンジ・価格のトレードオフは無視できません。
今後はより広く静止画機にもグローバルシャッターの搭載が広がり、一般ユーザーが当たり前に“歪みのない世界”を撮れる時代がやってくるでしょう。
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