
GFX ETERNA 55は“富士フイルム最大の賭け”か? 賛否が割れる理由と長期戦で勝つ条件
富士フイルムが投入したシネマカメラ「GFX ETERNA 55」。“中判”と呼ばれる44×33mmクラスの大型センサーを武器に、4:3オープンゲートやProRes、PLマウント運用まで見据えた―その仕様は、写真メーカーの動画参入というより、最初から映画の現場に立つための設計に見える。一方で「これ、本当に今やるべきだったのか?」という疑問も出ている。 この記事では、確定情報を積み上げた上で、なぜここまで賛否が割れるのか、そして“長期で勝つための条件”をみんカメ編集部目線でも整理します。
この記事のサマリー

GFX ETERNA 55は失敗か成功か。賛否の根っこは“会社の体力”にある。

大型4:3センサーとPL運用で勝負。勝ち筋は色・汎用性・実績づくり。

2026年はファーム更新とレンズ拡充が焦点。“定番化”できるかが見どころ。
GFX ETERNA 55は「どんなカメラ」かおさらい

GFX ETERNA 55は、富士フイルムが「プロのデジタル映像制作を主目的に設計した初のカメラ」と位置づけるモデルです。 核になるのは、対角約55mm・43.8×32.9mmの大型センサー(GFX 102MP CMOS II HS)とX-Processor 5。フルサイズ(35mm判)より約1.7倍大きいという説明も公式に出ています。
項目 | 内容 |
|---|---|
センサー | 対角約55mm/43.8×32.9mmの大型センサー(GFX 102MP CMOS II HS) |
プロセッサー | X-Processor 5 |
センサーサイズの位置づけ | フルサイズ(35mm判)より約1.7倍大きい |
撮影フォーマット | 4:3オープンゲート対応 |
対応フォーマット | GF/Premista/35mm(PL)/アナモフィック/Super35 |
マウント | Gマウント(PLマウントアダプター同梱) |
PL運用 | 初日からPLマウントレンズでの運用が可能 |
主な記録コーデック | Apple ProRes HQ(公式にメインと明言) |
最大記録解像度・フレームレート | 8K/30p、4K/60p、HD/120p |
その他の記録方式 | ProRes各種、10bit H.265 / H.264 |
外部出力 | HDMI経由で12bit RAW出力に対応 |
特筆は、映画の現場で効く“撮影フォーマットの柔軟さ”でしょう。4:3オープンゲートを活用しつつ、GF/Premista/35mm(PL)/アナモフィック/Super35といった複数フォーマットを前提にしています。 記録方式は、公式ページでApple ProRes HQを“メインの記録コーデック”として明言。最大8K/30p、4K/60p、HD/120pまでカバーするとされます。
2025年10月発売で、発売時の価格は$16,499(=2,432,076円)という流れが事実として整理できます。
なぜ賛否が割れる?「スペック」ではなく「会社の体力」を問う声
そんなGFX ETERNA 55に対して、Fuji Rumorsの最新記事で海外コミュニティで噴き上がった論争が公開されました。論点はスペック表の好き嫌いだけではなく、「専用シネマ機を今出す判断は誤りでは」「ETERNA 55が膨大なリソースを吸い、他が割を食っているように見える」そんな論調です。
この“リソース論”は、周辺状況からも理解できる部分がある。例えばPetaPixelの年次総括では、2025年の富士フイルムはカメラの動きは多彩だった一方、レンズ新規投入が薄く、最も目立ったのが「ETERNA 55と同時に出た動画向けGFレンズ」だと指摘しています。つまり「映画に寄せたぶん、写真側(X/GFX)の伸びしろが止まって見える」そう受け取られやすい土壌がありました。
さらに、同じくPetaPixelは、ETERNA 55が採用する102MPセンサーについて読み出し速度が遅く、性能面に影響する可能性にも触れています。ここは重要で、映像の現場は“絵作り”と同じくらい“運用の確実さ”が評価軸になります。大型センサーの画は魅力だが、ローリングシャッターやレスポンスが制作を縛るなら、選ばれない。この不安が、賛否の燃料になっています。
競合は“魔境”。ARRI・RED・Sonyがいる場所に、富士フイルムが踏み込む意味
では競合は何か。ざっくり言えば、ハイエンド現場の信頼を握るARRI、機動力と高解像のRED、そして撮影〜放送〜制作インフラで強いSonyが同じリングにいます。
例えばARRI ALEXA 35は、B&H上でも5万ドル台からのラインが並び、ProResや3D LUT等を含むプロ前提の構成になっています。REDのV-RAPTOR 8K VVは、フルフレーム8Kクラスの路線で約2.5万ドル帯の価格例が見えます。Sony VENICE 2は16ストップ級ダイナミックレンジや内部RAW系記録(X-OCN)、PLマウント運用など、王道の映画カメラとしての“型”を持ちます。
ここに富士フイルムが入るのは簡単ではないでしょう。なぜなら、シネマの現場は「本体性能」以上に、レンタル網、サポート、アクセサリー互換、ポストワークフロー、現場の“慣れ”が意思決定を左右するからです。富士フイルムはレンズ分野で存在感がある一方、カメラ本体では実績を積み直す必要があります。
それでも“スマートな長期戦”になり得る、3つの勝ち筋
否定派の声がある一方で、「長期で見れば大成功するかもしれない、そう願う」という温度感も同居しています。編集部として、勝ち筋は主に3つだと見ています。
(1) 色とトーンで“指名されるカメラ”になれるか
富士フイルムは公式に、フィルム由来の色再現やDigital Film Science、フィルムシミュレーション、F-Log2 C、3D LUT運用を前面に出す。映画制作で「色」は最後まで残る評価軸だ。ここで“富士フイルム指名”が生まれれば、参入の意味は一気に出ます。
(2) 4:3オープンゲート×大型センサーの“汎用性”
オープンゲートは、あとで横長にも縦にも切り出せる。SNS縦動画、シネスコ、IMAX風の比率…納品先が増えるほど武器になります。ETERNA 55は4:3オープンゲートと複数フォーマット対応を公式に語っており、さらにアナモフィックのデスクイーズ監視も用意する。この「撮ってから決められる」柔らかさは、今の制作現場の空気に合います。
(3) レンズの選択肢を“最初から広く”取っている
GFとPremista、さらにPL運用まで射程に入れているのは大きいです。実際販売サイトの商品説明でも、GマウントとARRI PLの両軸を強調し、GF 32-90mmのような動画志向レンズの存在にも触れている。 レンズ選びが自由=現場導入の心理的ハードルが下がる。これは新規参入者が最短で距離を詰めるやり方です。
2026年に向けて、注目すべき“現実的チェック項目”
議論を「好き/嫌い」で終わらせないために、私たちが2026年に見るべきはここ。
- ファーム更新の速度と方向性:実際に、ファーム更新で外部RAW(Atomos対応)を追加する動きが報じられている。改善が積み上がるなら評価は変わる。
- レンズと周辺機器の拡充:2025年が“薄い年”だったという総括もある以上、次の一手で空気は変わる。
- レンタル/現場採用の実績:ハイエンドほど「誰がどこで使ったか」が信用になる。ローンチフィルムなどの取り組みも含め、実例が増えるか。
まとめ:GFX ETERNA 55は「今すぐの正解」ではなく、「未来の居場所」を取りに行くカメラ
Fuji Rumorsが投げた問いは、核心を突いているでしょう。GFX ETERNA 55は、現時点で“万人の正解”になろうとしていない。むしろ、富士フイルムが映像制作の中心に座るための長期戦を始めた宣言に見えます。成功か失敗かを決めるのは、スペック表よりも「次の一年」です。レンズ、ファーム、現場実績―この3点が揃ったとき、GFX ETERNA 55は“異端の挑戦”から、“定番の選択肢”へと化ける可能性があります。
Fujifilm GFX ETERNA 55の最新情報をチェック
GFX ETERNA 55のスペック・価格・競合比較については、こちらの記事で詳しくまとめています。
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