【レビュー】X-T30 IIIの長所・弱点を徹底解説 X-T50 / X-S20 / 競合機と比較

【レビュー】X-T30 IIIの長所・弱点を徹底解説 X-T50 / X-S20 / 競合機と比較

2025年11月に発売された「X-T30 III」は、ポケット級の軽さとクラシックなダイヤル操作で人気のX-T30シリーズを、最新X-Processor 5でアップデートした新モデルです。6.2Kオープンゲート動画やAI被写体認識など“今どき”の中身が入った一方、手ブレ補正やモニター構造には割り切りもあります。この記事では発売直後のX‑T30 IIIの実機レビューをもとにして、前モデルとの違いや実際の使い勝手までフラットに長所・弱点までをまとめていきます。撮影ジャンル別の向き不向きもはっきり示していくので、迷っている人ほど最後まで読んでいただければ嬉しいです。

Author
筆者
みんカメ編集部
みんなのカメラ編集部によるカメラに関する最新情報・レビューなどを毎日配信しています!ためになるプロのテクニックもご紹介。

この記事のサマリー

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X-T30III は、軽量ボディ×最新X-Processor 5でAF・動画が大幅進化した“写真寄りエントリー最強クラス”の1台。

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AI被写体認識AF・6.2K/4K60・20種のフィルムシミュ+専用ダイヤルで、“撮って出しの楽しさ”と機動力が抜群。

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一方で IBISなし・チルト液晶・UHS-I 1スロットなど割り切りも明確で、動画中心や自撮り用途では上位機が有利。

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競合は X-T50(40MP+IBIS)、X-S20(IBIS+バリアングル)、EOS R50(初心者AF)、Z50 II(操作性)、α6700(動画AF最強)。

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“軽さ・デザイン・撮って出し重視の写真ユーザー”に最適で、特にスナップ・旅行用メイン機として完成度が高い。

目次

レビュー要点:X-T30 IIIはどんな人におすすめ?

Via: PetaPixel

X-T30 IIIは、クラシックな操作感を小さなボディに詰めた“写真優先”のミラーレスです。まずは向き不向きを先に決めると、買い物が一気にラクになります。軽さと色づくりの楽しさに惹かれる人は満足しやすく、手ブレ補正や自撮り動画を最優先する人は注意が必要です。読みながら、撮りたい被写体を思い浮かべてみてください。

おすすめできる人:軽快スナップと「撮って出し」を楽しみたい

旅行・街歩き・日常スナップが中心で、カメラを“持ち出す頻度”を上げたい人に刺さります。ボディ約378gで、気負わず首から下げられるサイズ感です。見た目は変わらなくても“コンパクトなレトロパッケージ”として、スナップ用途での携帯性が高く評価されています。フィルムシミュレーションを軸に、JPEG中心で作品づくりしたい人ほど相性が良いでしょう。

Digital Camera WorldはX-T30 IIIをX-Tシリーズで最も小さく軽いボディとしつつ、X-Processor 5によってAFや動画機能が上位機と同世代になった点を評価しています。写真が主役でも、旅の空気を動画で残したい人には6.2K/4K60が効きます。短いクリップを撮って、フィルムシミュレーションの色でまとめて共有する流れが作りやすいです。

PetaPixelの実機レビューでも、X‑T30 IIIは「長年エントリークラスを支えてきたX‑T30シリーズの第三世代で、価格を15万円前後に抑えつつ、初心者が富士フイルムの世界に入っていく“玄関口”としての役割を担っている」と高く評価されています。小型ボディにアナログ調のダイヤル操作を残しつつ、シーンに応じた自動設定や顔・瞳認識も搭載しているので、「最初の一台だけど見た目と操作も楽しみたい」という人には特に向いています。

不向きな人:手ブレと動画運用を“ボディ任せ”にしたい

最大の割り切りはボディ内手ブレ補正(IBIS)なしな点でしょう。TechRadarは「上位機と比べたとき、最大の犠牲はIBISの非搭載」とし、手持ち動画の自由度はX-T50などに譲ると指摘しています。液晶はバリアングルではなくチルトのみ。Digital Camera Worldも“ソロのVlog”では工夫が必要と述べ、外部モニターやXAppによる確認が前提になりがちとしています。

類似観点でDPReviewも「X‑S20など同価格帯でIBISを載せてきた機種がある中で、X‑T30 IIIにボディ内手ブレ補正を積まなかったのは惜しい」と指摘しています。静止画ならレンズ側の手ブレ補正と撮り方でカバーできますが、「歩き撮り動画をIBIS頼みで撮りたい」というニーズにはX‑S20やX‑T50の方がストレートに応えてくれるでしょう。

また、防塵防滴は前提ではなく、SDスロットも1枚のみ。雨天や仕事で二重記録したい人は、上位機や別システムの方が安心です。露出モードの切り替えは従来どおり、シャッタースピードダイヤルとレンズ側の絞りリングの組み合わせで行います。専用のP/A/S/Mモードダイヤルはなく、AUTOレバーで全自動撮影に切り替える構成です。

また、ボディが小さいぶん手が大きい人には窮屈という声もあります。上面左肩のダイヤルがドライブからフィルムシミュレーションに変わった点も含め、店頭での握り心地と操作感のチェックはしておきたいところです。

X-T30 IIIの要素別レビュー早見表

要素

評価サマリ

デザインと携帯性

レトロデザインの小型軽量ボディで旅スナップ向きだが、防塵防滴ではなく大きな手にはやや小さめ。

操作性

シャッターダイヤル+フィルムシミュレーションダイヤルで“撮って出し”しやすい一方、PASMダイヤル慣れの人には少しクセがある。

画質

26MP X-Transで色とノイズ耐性に優れ、実用感度は高いが、低感度ダイナミックレンジは一部ライバルより控えめ。

AF

現行X世代のAI被写体認識で大きく進化し日常・スナップには十分だが、動体追尾の“粘り”はCanon/Sonyに一歩譲る。

連写とレスポンス

メカ8fps/電子20〜30fpsでエントリー機としては俊敏だが、30fpsはクロップとローリング歪みを意識して使い分けが必要。

動画性能

6.2K/30p・4K/60p・10bit F-Log2対応とスペックは強力だが、IBISなし&チルト液晶で“歩き撮りVlog専用機”にはなりきれない。

手ブレ・暗所・フラッシュ

IBIS非搭載ながら‑7EV AFとOISレンズ、内蔵フラッシュで静止画は意外と粘れるが、夜の手持ち動画は工夫が必須。

バッテリー・記録メディア

Economyで最大約425枚とクラス相応の持ちだが、予備1本は欲しいレベルで、UHS‑Iシングルスロットゆえバックアップ運用は工夫が必要。

スマホ連携・Instax

XAppとの連携とInstax Linkプリンター対応で、撮影→スマホ共有→プリントまでの“出口”が作りやすいのが強み。

基本情報のおさらい:発売日・価格・スペックとX-T30 IIからの違い

X‑T30 IIIは2025年11月発売の最新X-T30です。まずは販売状況を先に押さえて、迷子にならない地図を作りましょう。

発売日と価格:国内オープン、市場想定はボディ約14万円前後

待望の末に25年11月に正式発表され、X‑T30 IIIのボディは2025年11月28日、XC13-33mmとのレンズキットが12月16日発売です。予約開始時からボディ: 137,610円(税込)~、レンズキット: 160,380円(税込)~という価格帯で流通されています。レンズキットは新しいフジノンレンズ「XC13-33mmF3.5-6.3 OIS」付き。レンズ単体価格が海外で399ドル前後であることを考慮するとキットのお得さは大きく、初回はキットから入る選択を推しやすい構成になっています。

カラーはブラック/シルバー/チャコールシルバーの3色展開です。

重要スペックとX-T30 IIからの進化:プロセッサー更新が本丸

X-T30 IIIの大きな強化ポイントは、画像処理エンジンがX-Processor 4 → X-Processor 5に更新されたことです。センサーや外観はX-T30 IIを踏襲しつつ、AF・動画・フィルムシミュレーションまわりが一気に“現行X世代”に近づいています。特に AI被写体認識AF、6.2Kオープンゲート/4K60p/10bit対応 は世代の差がはっきり出る部分で、静止画・動画どちらも体感が変わるアップデートです。

項目

X-T30 II(旧)

X-T30 III(新)

センサー

APS-C 26.1MP X-Trans CMOS 4

※同じ(変更なし)

画像処理エンジン

X-Processor 4

X-Processor 5(AF・動画が大幅強化)

AF

顔・瞳AF中心

AI被写体認識(人物・動物・鳥・車・バイク・列車・飛行機・昆虫・ドローン)対応

動画性能

4K/30p、FHD/240p

6.2K/30p(3:2)/4K/60p/10bit H.265/FHD/240p

フィルムシミュレーション

約18種/専用ダイヤルなし

20種+専用ダイヤル(FS1〜3レシピ登録可)

操作系(上面ダイヤル)

左肩=ドライブ

左肩=フィルムシミュレーション(DRIVEはボタンへ移動)

EVF

約236万ドット

※同じ

背面液晶

3.0型 約162万ドット(チルト)

※同じ

バッテリー

NP-W126S/約390枚

NP-W126S継続/Economy時 約425枚

記録メディア

SD UHS-I×1

※同じ(シングルスロット継続)

内蔵フラッシュ

あり

あり

共通の割り切り

IBISなし・非防塵防滴

同じ(構造据え置き)

一方で、IBISなし/UHS-Iシングルスロット/防塵防滴なし といった基本構造はX-T30 IIのまま据え置き。そのため「中身の進化を重視するか」「コンパクトなまま撮影体験をどうアップグレードしたいか」が選ぶポイントになります。

デザインと携帯性のレビュー:軽さは正義、でもグリップは好みが分かれる

Via: photographyblog

X‑T30 IIIの魅力は、数字より“持った瞬間”の感覚に現れます。小さく、軽く、クラシックな外観。そうした要素が重なって、毎日の相棒になりやすいカメラです。ただし小型ゆえの窮屈さもあります。自分の手と使い方に合うか、ここで現実的にイメージしておくと安心です。見た目の好みも、持ち出す頻度に直結します。

小型ボディの実感:ポケット級の機動力と、手の大きさ問題

サイズは約118.4×82.8×46.8mm、質量は約378g(バッテリー/カード込み)。見た目だけでなく、カバンの隙間に入る体積が効いてきます。TechRadarは「X-T30 IIIとXC13-33mmの組み合わせをジャケットのポケットに滑り込ませられた」と表現し、街歩きでの取り回しを高評価。Tom’s Guideは、同クラスのEOS R50やZ50 IIと比べて「タイムレスなレトロスタイルと高品質な外装で、明らかにワンランク上のルックスと手触り」とコメントしています。軽さと同時に“持っていて気分が上がるかどうか”を重視するなら、X‑T30 IIIのデザインは大きな加点要素になりそうです。

一方で背面のQボタンを誤って押しやすいとも書いており、小型ゆえのボタン密度も触れています。Digital Camera Worldも長所として“最も小さく軽いX‑T”を挙げつつ、「手が大きいとややコンパクトに感じる」とコメント。軽さと握りやすさはトレードオフです。外観は前モデルとほぼ同じで、ポップアップ式の内蔵フラッシュも継承。追加のクリップオンフラッシュを持たずに夜の室内までカバーしやすいのは実用的なポイントです。

競合と比べた携帯性:レンズ込みの総重量で考える

キットのXC13-33mmを付けた総重量は約503gとされています。ズームレンズ込みで500g前後に収まるAPS-Cミラーレスは少なく、旅カメラとしてはかなり軽量級と言えます。ただし、握りの深さやバリアングル液晶の有無はライバルに分があります。例えばグリップ重視ならX‑S20、動画の自撮り重視ならバリアングルモニターのX‑M5の方が扱いやすいでしょう。

IBISが欲しくてX‑T50に行くと、わずかに大きく重くなります。逆にX‑T30 IIIは“軽さで撮影回数を稼ぐ”タイプなので、移動量が多い人ほどメリットが出ます。キットで約503gという軽さは、長距離の街歩きで差が出る部分です。「軽さ最優先で、写真中心。たまに動画」というスタイルならX‑T30 IIIがハマりやすい一方、グリップをガッツリ握り込みたい人は、サイズアップした上位機も検討する価値があります。

操作性のレビュー:フィルムシミュレーションダイヤルは“魔法”か“罠”か

Via: TechRadar

X‑T30 IIIで賛否が分かれやすいのが、上面左肩のドライブダイヤルが「フィルムシミュレーションダイヤル」に置き換わった点です。どのフィルムシミュレーションで撮るかを物理ダイヤルで決めるスタイルに変わりました。色づくりが近道になる一方、露出モードを頻繁に切り替える撮り方のユーザーとは好みが分かれます。実際のレビューの声を交えながら整理していきます。

良い点:20種類+カスタム3枠で“迷いが楽しさ”に変わる

The Vergeは、ダイヤルから20種類のフィルムルックにアクセスでき、さらに3枠のカスタム登録ができる点をわかりやすく紹介しています。Digital Camera Worldも、よく使うフィルムシミュレーションをダイヤルから直接呼び出せる点を高く評価。20種類すべてのフィルムシミュレーションはメニューから選べ、ダイヤル側には主要なプリセットと3つのレシピ枠が割り当てられる構成だと解説しています。

撮って出し運用なら、撮影からSNS投稿までの“編集コスト”が減るのが大きなメリットです。フィルムシミュレーションの選択そのものが撮影の楽しさになりやすいのが、富士フイルム機らしいポイントです。カスタム3枠(FS1〜FS3)があるので、よく使うレシピを“ダイヤル一発”で呼び出せます。光が変わる旅先でも、仕上がりの方向性を素早く決められるため、JPEG中心の人には特に便利です。

注意点:露出モード切替の考え方と、ボタン割り当て

TechRadarは「露出モードを頻繁に切り替える撮り方なら、フィルムシミュレーションより撮影モードダイヤルの方が好みだ」と述べており、色優先かモード優先かで評価が分かるとしています。X-T30 IIIでは、上面右側のシャッタースピードダイヤルとレンズ側の絞りリング(またはフロントダイヤル)の組み合わせでP/A/S/M相当を作る設計です。PASMダイヤルはないため、他社から乗り換える場合は最初に「自分の基本ポジション」を決めておくと戸惑いにくくなります。

ドライブモードは、前モデルのダイヤルではなく背面の削除ボタンと兼用の「DRIVE」ボタンに移動しました。連写・ブラケット・セルフタイマーをよく使うなら、このボタンやQメニューに慣れておくと運用しやすくなります。同価格帯でも操作思想は分かれます。Z50 IIやEOS R系はPASMモードダイヤル前提、X‑T30 IIIはフィルムシミュレーションとシャッターダイヤル前提という違いがあります。自分の撮り方に近い哲学を選ぶ意識が大切です。

画質のレビュー:26MP X-Transの写りと「撮って出し」耐性

X‑T30 IIIはセンサー自体が新しくなったわけではありませんが、26MP X-Trans CMOS 4とX-Processor 5の組み合わせにより、“絵作り”と“出力のしやすさ”で選ばれるカメラです。RAW現像派もJPEG派も、どこが強みで、どこで差が出るのかを整理しておくと、自分に合うかどうか判断しやすくなります。

解像と色:26MPでも十分、扱いやすいバランス

TechRadarは、同じセンサー/プロセッサーを持つX‑S20やX‑M5と共通の画質傾向であるとしたうえで、26MPのディテールは価格帯で健闘しているとコメントしています。同レビューでは、約20MP級のNikon Z50 IIや24MP級のEOS R10、α6400など他社APS-C機と比べても見劣りしにくいとし、トリミング耐性も日常用途には十分と述べています。

色の面では、REALA ACEやNOSTALGIC Neg.といった新しいフィルムシミュレーションが追加され、撮って出しの仕上がりの幅が広がりました。フィルムシミュレーションは合計20種類。REALA ACEはニュートラル寄りで汎用性が高く、NOSTALGIC Neg.は夕景や室内の暖かい雰囲気を出しやすいタイプです。JPEG中心で使いたい人には大きな魅力です。

JPEG/HEIFとRAW:撮影後の手間を減らしたい人ほど価値が出る

Digital Camera Worldは「JPEGやHEIFをそのままSNSに出せる」と評価し、フィルムシミュレーションを使った撮って出しの色とコントラストの良さを強調しています。RAWで追い込みたい人にとっても、X-Processor 5による処理速度向上はメリットです。AFや連写のテンポが上がる分、良いカットの母数を増やしやすくなります。

HEIF撮影に対応しているため、JPEGよりも階調が滑らかで、空や肌のグラデーションが崩れにくいのも特徴です。容量を抑えつつ編集耐性を高めたい場合に選びやすいフォーマットと言えます。40MPセンサーを積むX‑T50と比べると解像感は譲る一方、データは軽く、レンズ側の要求も緩めです。編集環境がそこまで強くないユーザーには、26MPの方が扱いやすいケースも多いでしょう。

AFレビュー:AI被写体認識がもたらす“失敗カットの減少”

Via: PetaPixel

X‑T30 IIIの進化で最も分かりやすいのがAFです。センサーは据え置きながら、X-Processor 5と最新アルゴリズムの採用でピント合わせの体感が変わりました。とくに子ども・ペット・乗り物など動きのある被写体が多い人ほど、恩恵を感じやすいポイントです。

被写体認識の範囲:人物だけじゃない、動体に強くなった

富士フイルムの公式資料では、ディープラーニングAIによる被写体検出が顔・瞳に加え、動物・鳥類・車・バイク・自転車・飛行機・鉄道・昆虫・ドローンまでカバーすると説明されています。PetaPixelのレビューでも、上位機と同等レベルの被写体認識に更新されたと紹介されています。暗所AFも強化され、B&Hなどのスペック情報では位相差AFの低照度限界が-7EV相当まで対応するとされています。街灯下や室内イベントでピントの迷いが減るのは、撮影体験を大きく変える要素です。

-7EVだからといってどんな暗さでも合焦するわけではありませんが、従来機よりも低照度での歩留まりが上がることは各レビューで共通して指摘されています。AFエリアは最大425点の像面位相差ポイントで構成され、シングルポイント/ゾーン/ワイド/トラッキングなどから選択可能です。迷ったらAF-C+ゾーンAFを基本にしておけば、多くのシーンをカバーできます。

実写での評判と競合:富士フイルム内では上位、他社は強敵

Digital Camera Worldは「AFが前世代から大きく進化し、富士フイルム現行機と同等レベルになった」と評価しています。X‑S20やX‑M5と同じ世代のAFが、この価格帯に降りてきたという見方です。一方で同レビューはシビアな評価で、CanonやSonyのAFと比べると“粘り”ではわずかに及ばないとも言及しています。スポーツなどシビアな動体撮影が最優先なら、Rシリーズやαシリーズも同時に検討するのが無難でしょう。

競合のZ50 IIや最新R系は、被写体認識の反応がより直感的だとする声もあります。動体が最優先なら、店頭で実際に追従の感触を比べてみると後悔しにくくなります。とはいえ、スナップや家族写真のようなシーンでは十分以上の性能です。被写体認識がうまくハマるだけで成功率が上がり、撮影が楽しくなるタイプの進化と言えます。

連写とレスポンスのレビュー:20fps/30fpsは実戦でどこまで使える?

動きを止めたい撮影では、AFと並んで重要なのが連写速度とバッファです。X‑T30 IIIは小型ボディながら、数字以上に粘る場面があります。ただし万能ではなく、メカシャッター/電子シャッターの使い分けや、バッファの特性を理解しておくと安心です。

連写スペックの要点:メカ8fps、電子20fps、クロップ30fps

公式スペックでは、メカニカルシャッターで最高8コマ/秒。電子シャッターでは20コマ/秒、さらに1.25倍クロップ時には30コマ/秒まで連写速度を上げられます。TechRadarは、8fps(メカ)や20fps(電子)の連写が前世代より長く続き、JPEGで最大173枚程度まで粘れる点を挙げています。決定的瞬間を取りこぼしにくくなったという評価です。

30fpsは1.25倍クロップとなるためトリミング前提ですが、子どもの表情やペットの一瞬などには有効です。画角の余裕がある被写体なら、実戦でも十分使える選択肢です。RAW連写を多用するなら、実用域は20fps前後と考えておくと現実的です。JPEG中心ならより長く粘れるので、自分のワークフローと相談してモードを選ぶのが良いでしょう。

競合比較:連写“だけ”で選ばず、AF追従と歪みも見る

高速連写は、AF追従性能とローリングシャッター歪みまで含めて評価する必要があります。電子シャッター30fpsは魅力的ですが、被写体や照明によっては歪みやフリッカーが出る可能性があります。連写をメインの撮影スタイルにしたい場合は、グリップやバッファの安心感まで含めて他社機と比較するのが現実的です。軽さを取るか、多少重くても安定感を取るかで答えは変わります。

動体撮影を最優先するユーザーは、AFの評価が高いCanon/Sony機や、エルゴノミクスに優れるZ50 IIなども候補になるでしょう。逆に、スナップ中心であれば8fps前後でも十分な場面が多いはずです。実戦では、照明のフリッカーや被写体の歪みが気になる場面ではメカ8fpsに戻すと安全です。速度だけでなく“破綻しない確実さ”を優先する視点も持っておきたいところです。

動画性能のレビュー:6.2Kオープンゲートと4K60、ただし液晶はチルト

X‑T30 IIIは「写真優先」と位置づけられることが多いものの、動画スペック自体はかなり現代的です。スマホ動画からステップアップしたいユーザーにも十分検討に値する内容になっています。一方で、手ブレ補正やモニター構造など運用面でのクセもあります。できること/工夫が必要なことを分けて考えるとイメージがつきやすくなります。

できること:6.2K 10-bitとオープンゲートが“編集耐性”を上げる

内部記録で6.2K/30p、4K/60p、FHD/240pに対応し、H.265/HEVCによる4:2:2 10bit記録が可能です。このクラスのAPS-Cミラーレスとしては、動画仕様はかなり充実した部類に入ります。Digital Camera Worldは、3:2全面を使うオープンゲート撮影により、編集時に16:9(YouTube)や9:16(Reelsなど)へ自在に切り出しやすい点をわかりやすく紹介しています。

TechRadarも、縦動画向けの9:16ショートムービーモードを紹介し、1回の撮影から複数SNS用の素材を作りやすいとしています。撮影時に3:2で余裕を持たせておけば、後から縦横どちらにも切り出せるため、現場では構図に集中しやすくなります。F-Log/F-Log2にも対応しているため、カラーグレーディング前提のワークフローにも組み込みやすい仕様です。編集込みで仕上げたいユーザーほど、6.2Kオープンゲートの恩恵を受けやすいでしょう。

苦手なこと:手ブレと自撮りは工夫が要る(競合と比較)

弱点は、IBISがないことと、液晶がバリアングルではなくチルトのみなことです。Digital Camera Worldは、ソロVlogや自撮り主体の運用では外部モニターやXAppを併用した方が良いと指摘しています。動画の手ブレ補正は電子式(デジタル)中心になるため、歩き撮りの滑らかさはIBIS付きのX‑S20やX‑T50に軍配が上がります。DISを使うと画角が狭くなるため、広角寄りのレンズを選ぶと余裕が出ます。

音声面では2.5mmマイク端子と、同梱のアダプターを使ったヘッドホン出力に対応しています。外部マイク+ウインドジャマーの組み合わせなら、軽量なVlogセットを組むことも可能です。逆に、三脚やジンバルを前提にした撮影であれば、6.2K 10bitをこのボディサイズで持ち歩ける利点は大きく、旅動画との相性も良好です。

手ブレ・暗所・フラッシュのレビュー:IBISなしでも戦える条件を整理

Via: TechRadar

X‑T30 IIIを検討するうえで避けて通れないのが「ボディ内手ブレ補正なし」という前提です。ここを理解しておくと、購入後のギャップはかなり減ります。同時に、暗所AFや内蔵フラッシュなど“助け舟”となる機能もあります。静止画と動画で対策が変わるため、分けて考えると整理しやすくなります。

手ブレ対策:OISレンズ+撮り方でカバー、動画は割り切る

The VergeやTechRadarはいずれも「IBISは非搭載」を強調し、動画の歩き撮りやスローシャッター撮影では上位機ほど楽ではないとしています。ただ、キットのXC13-33mmはOIS付きです。静止画であれば、シャッター速度をやや遅めにしてもレンズ側の補正でカバーしやすく、構え方や連写を組み合わせることで実戦的にはかなり対応できます。

動画の手ブレはデジタル補正頼みになるため、歩き撮りではジンバルやストラップを使った安定化を併用した方が安心です。DISをOFFにして広角で撮り、編集時にスタビライズをかける選択肢もあります。静止画では「1/焦点距離秒」を目安にしつつ、被写体の動きに応じてシャッター速度を決めるのが基本です。ISOを少し上げてでもシャッター速度を優先した方が、結果的には歩留まりが高くなる場面も多いでしょう。

暗所とフラッシュ:-7EV AFとGN7の内蔵フラッシュが意外と効く

低照度AF性能は、前述のとおり-7EV相当まで対応するとされています。室内イベントや夜スナップでピントの迷いが減るだけでも、撮影体験は大きく変わります。さらにX‑T30 IIIはポップアップ式の内蔵フラッシュを搭載しています。Digital Camera Worldは、近年のミラーレスでは貴重な内蔵フラッシュとして、その存在を評価しています。

この内蔵フラッシュはガイドナンバー約7(ISO200)とされ、近距離の人物や料理をサッと明るくする用途に適しています。光量は自動制御されるため、簡易的な補助光として使いやすい仕様です。IBISが必須ならX‑S20やX‑T50へ、軽快さを優先するならX‑T30 IIIへ、という分け方をしておくと、自分に合うかどうか判断しやすくなります。

バッテリー・記録メディアのレビュー:425枚の現実とUHS-Iの割り切り

Via: PetaPixel

スペック表に記載されている「425枚」は、撮影条件付きの数字です。現場で困らないために、バッテリー運用とメディア選びのポイントを押さえておきましょう。

軽量ボディはバッテリー容量も限られがちです。ここを理解しておけば、旅行やイベントでも余裕を持って運用できます。

バッテリー:Economyで最大425枚、通常は315枚という考え方

Digital Camera Worldは、CIPA規格でEconomy約425枚、Normal約315枚、Boost約310枚という数値を紹介しています。最大値だけでなく、設定による差を意識しておくのがポイントです。TechRadarも、EconomyモードではAFや液晶の挙動が抑えられる代わりに撮影枚数が伸びると説明しています。長時間の旅ではEconomy、動体撮影ではBoostといった切り替え方が現実的です。

結論としては予備バッテリー推奨です。とくに動画撮影や連写を多用する人は、最初から2本体制にしておくと精神的な余裕が大きく変わります。Economyで撮影枚数を伸ばしたいときは、背面液晶の明るさや自動電源OFFまでの時間、Bluetooth常時接続の有無など“地味な設定”を見直すだけでも差が出ます。

記録メディア:SD UHS-I×1は人を選ぶ(バックアップ前提なら要注意)

カードスロットはSD UHS-Iが1基のみです。4K60や6.2Kを撮る場合でも、UHS-I対応カードで運用できますが、書き込み速度の速いU3/V30クラス以上を選ぶと安心です。スロット1枚構成のため、カメラ側での二重記録はできません。仕事用途や絶対に失敗できない撮影なら、デュアルスロット機を選ぶか、外部レコーダーやバックアップ運用を組み合わせる方が安全です。

旅撮影なら、毎晩ノートPCやポータブルSSD、スマホなどにデータを退避する運用が現実的です。カード1枚のまま長期旅行に出る運用は避けた方が安心でしょう。内蔵フラッシュを搭載していることもあり、防塵防滴構造にはなっていません。天候の読めない撮影が多い場合は、防滴ボディや防滴レンズを中心に組むシステムも検討しておきたいところです。

スマホ連携・Instaxのレビュー:SNS時代の“出口”が用意されたカメラ

Via: Amateur Photographer

いまのカメラ選びでは「撮った後、どう外に出していくか」まで含めて考える必要があります。X‑T30 IIIは、スマホ連携とInstax連携の両方が用意されており、撮影した写真を外に出す導線がよく整えられています。スマホ転送だけでなく、Instaxプリントという“物理的な出口”まで含めた運用を意識すると、写真が生活の中に残りやすくなります。

Instax Link対応:アプリ不要でプリント、比率に合わせて切り抜ける

撮影時にInstax用のフレームを表示しておけば、あとからトリミングしてプリントするのではなく、その場で仕上がりをイメージしながら撮影できます。イベントや旅先で1枚だけプリントして渡すような使い方にも向いています。

スマホ転送→アプリ編集→プリントという手順が短縮されるため、「撮った写真がそのままデータのまま埋もれてしまう」状況を減らしやすい設計と言えます。撮影会でその場プリントして配る、旅先で日付入りのミニアルバムを作る、子どもの成長を冷蔵庫に貼るなど、デジタルだけで完結しない“出口”を作ることで、カメラを持ち出すモチベーションも維持しやすくなります。

スマホからのステップアップ:公式の狙いと、競合との違い

Wi‑Fi/Bluetoothでの画像転送はもちろん、フィルムシミュレーションで“色の方向性”を先に決めてしまえるため、編集アプリ上で迷う時間を減らしやすいのが特徴です。スマホアプリ「FUJIFILM XApp」は、画像転送だけでなく、リモート撮影やカメラ設定の変更、ファームウェアアップデートにも対応しています。集合写真や三脚撮影で「自分も写りたい」場面でも活用できます。

一方で、撮影後の色づくりをスマホアプリ側で完結させるスタイルが合う人には、NikonやCanonのエントリー機も有力候補になります。X‑T30 IIIは「カメラ側で色を決めたい」タイプのユーザーに特に向いたボディです。

Fujifilm X‑T30 IIIの作例

各実機レビュー内でX‑T30 IIIの実際の作例も紹介されています。

Via: TechRadar

Via: PetaPixel

Via: Amateur Photographer

競合比較と選び方:X-T50 / X-S20 / X-M5 / Z50 IIと迷ったら

X-T30 III の価格帯には、FUJIFILM 内でも X-T50/X-S20/X-M5 といった近い立ち位置の機種が複数存在し、さらに他社でも Canon EOS R50、Nikon Z50 II、Sony α6700 といったAPS-Cの強力な選択肢があります。

それぞれ「得意分野」「弱点」「向いているユーザー」が異なるため、どのポイントを優先するか(例:IBIS、AF、携帯性、動画、自撮り、色づくり、将来のレンズ資産) で最適解が変わります。

比較早見:何を優先すると、どの機種が近い?

機種

得意(メリット)

注意点(デメリット)

X-T30 III

軽量378g・レトロデザイン。フィルムシミュダイヤルで撮って出しが楽しい。6.2K/4K60・AI被写体認識AFで写真も動画も一定水準。

IBISなし/チルト液晶/UHS-I 1スロット。動画の歩き撮り・自撮りは不利。

X-T50

40.2MP高解像・7段IBIS・強力な動画(6.2K/30, F-Log2)。“X-T30 IIIの上位互換”に近い。

価格が大きく上昇。ボディサイズもわずかに大きく、軽さ重視なら注意。

X-S20

深いグリップ+7段IBIS+バリアングル。PASMダイヤルで直感的。動画&Vlog最強のX APS-C。

X-T30 IIIより重い(約491g)。レトロデザインではない。

X-M5

EVFレス・小型でVlog寄り。バリアングル液晶と同等動画性能。

EVFがない。IBISなし。写真中心のユーザーには不向き。

Canon EOS R50

軽量&バリアングル。Dual Pixel AF が分かりやすく強力。初心者の失敗が少ない。

IBISなし。RF-Sレンズがまだ少ない。上位拡張性は限定的。

Nikon Z50 II

深いグリップ・操作しやすいPASM。新EXPEEDでAF追従&30fps電子連写が優秀。

IBISなし。Z DXレンズが少なめで、拡張性はフルサイズZレンズ依存。

Sony α6700

5軸IBIS・AI被写体認識・4K120p。APS-C動画+AF領域で最強クラス。

価格が高く、X-T30 IIIの倍近い。操作系がやや玄人向け。軽さでも劣る。

選び方は案外シンプルです。この表に沿って次のような分け方になります。優先順位で選択肢は自然に絞れるため、まずは 「IBISが必要か?」「自撮りをするか?」「軽さをどこまで優先するか?」 を決めておくと失敗しません。

  • 軽さと“撮って出しの色”を楽しみたい → X-T30 III
  • IBISと40MPの解像度を求める → X-T50
  • 写真も動画も“楽に安定して撮りたい” → X-S20
  • 自撮り・Vlog重視、小型ボディ → X-M5
  • わかりやすいAF・PASM操作重視 → EOS R50/Z50 II
  • 動画とAF最強クラス → α6700

購入の組み立て:軽量キット→単焦点追加が失敗しにくい

迷ったらまずXC13-33mmキットが無難です。20〜50mm相当をカバーし、OISも備えているため、“IBISなし”の弱点をある程度補ってくれます。そのうえで、次の一本として35mm前後相当の小型単焦点を追加するのが扱いやすい構成です。レンズまで軽くすると持ち出す回数が増え、結果的に撮影枚数が増えることで上達スピードにもつながります。

撮って出し重視なら、まずはキットズームで画角の感覚を掴み、よく撮る被写体が見えてきた段階で単焦点を決めると失敗しにくくなります。23mm/35mm相当は街スナップの定番で、ボディの軽さとも相性が良い焦点距離です。同時に、予備バッテリーと信頼できるUHS-I U3/V30クラスのSDカードは最初から用意しておきたいところです。ストラップや小型のサムレストなど、グリップ感を補うアクセサリーも検討すると快適さが一段上がります。

X‑T30 IIIのレビューまとめ

X‑T30 IIIは、X-Trans CMOS 4センサーと最新X-Processor 5を組み合わせ、AFと動画性能を現行世代まで引き上げた小型ミラーレスです。フィルムシミュレーションダイヤルで色づくりにアクセスしやすく、撮って出しでSNSまで完結させたいユーザーには特に向いています。一方でIBISなし、チルト液晶、SD UHS-I×1という割り切りもはっきりしているため、手ブレ補正や自撮り動画を最優先するならX‑S20やX‑T50も合わせて検討するのが安全です。自分の撮りたい被写体と撮影スタイルに合うかどうかが、X‑T30 IIIを選ぶかどうかの決め手になります。


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