
【2025年版】SIGMA fpのレビューまとめ 小型フルサイズの真価と弱点


フルサイズなのにポケットサイズという少し不思議なカメラが「SIGMA fp」です。世界最小クラスのボディに、24.6MPフルサイズセンサーと本格的な動画機能を詰め込んだ一台ですが、尖った設計ゆえに「最高にハマる人」と「正直つらい人」がハッキリ分かれます。この記事では、複数の実機レビューも踏まえながら、SIGMA fpの長所と弱点・競合比較まで一気に整理し、自分の使い方に合うかどうかを判断できるようにまとめました。
この記事のサマリー

SIGMA fpは、世界最小クラスのフルサイズボディにRAW動画機能を詰め込んだ「モジュラー前提の遊べるサブ〜セカンドボディ」で、万人向け万能機ではなく刺さる人に深くハマるタイプ

静止画画質は24.6MPフルサイズとして同クラス機と肩を並べるレベルで、ダイナミックレンジや色再現・豊富なカラーモードのおかげで作品寄りの写真づくりがしやすく、画質そのものの弱点はほとんどない

一方でAFはコントラスト方式のみでAF-Cと連写時の追従は弱く、メカシャッターやIBIS、EVFも省かれているため、動体撮影・オールマイティな1台運用・“楽に失敗したくない撮影”には向きにくい設計

動画面では4K 12bit CinemaDNG RAWや外部SSD収録、充実したシネ寄り機能によって、ジンバルやリグ前提ならシネマカメラ級の絵作りができる一方、手持ち撮影やAF任せのVlog用途では制約が目立つ

Lマウントの豊富なレンズ群とシグマ純正アクセサリーで小さなボディを自由に拡張でき、中古価格帯では「フルサイズRAW動画+高画質スチル」が手頃に手に入るため、尖った個性とモノとしての楽しさに価値を感じるユーザーには強くおすすめできる一台
SIGMA fpのレビュー要点:どんな人にはおすすめで、どんな人には不向きか

SIGMA fpは「小さなフルサイズ」「動画も撮れるスチル機」というキャッチコピーだけを見ると万能そうに見えますが、実際はかなり尖った立ち位置のカメラです。まずは向き・不向きを整理して、自分のスタイルと噛み合うかどうかをイメージしてみましょう。DPReviewの実機レビューでも「コンパクトで強力だが完璧ではない」と評しており、ハマる人にはたまらない一方で、メイン機としては厳しい場面もあると指摘しています。
おすすめできるのはこんな撮影スタイル
一番相性が良いのは、日常や旅先でのスナップを気軽に撮りたいけれど、画質はフルサイズレベルで妥協したくない人です。ボディは約370g(バッテリーとカード込みでも約422g)の軽さで手のひらサイズのため、45mm F2.8 DG DNのような小型レンズを組み合わせると、ジャケットのポケットにも収まるほどのコンパクトさになります。街歩きや国内外の旅行、カフェスナップの相棒として持ち出すと、スマホとは一線を画す質感の写真を気楽に残せます。
次に、映像制作やVlog撮影を本格的にやってみたいクリエイターにも向いています。外部SSDに12bit CinemaDNG RAWで収録できるフルサイズ機は今でも珍しく、PetaPixelの特集記事でも「AFや手ブレ補正などに弱点がある一方で、RAW動画能力は素晴らしい」と評価されています。小型ボディなのでジンバルとの相性も良く、モニターやケージを組み合わせれば立派なシネマリグに変身します。撮影も編集も自分で楽しみたいタイプには、fpの“道具としての面白さ”が響くでしょう。
不向きになりやすいユーザー・シーン
一方で、家族写真や運動会撮影を中心に考えている人にはあまりおすすめできません。AFはコントラスト検出式で、像面位相差を積んだソニーαシリーズやキヤノンEOS Rと比べると追従性が明らかに劣ります。Digital Camera Worldは「静止した被写体には問題ないが、連写時のAFは安定せず、スポーツやアクション向きではない」と評しており、走り回る子どもやスポーツ撮影には力不足です。さらに電子シャッターのみなので、ローリングシャッターによる歪みも出やすくなります。
さらにPetaPixelもfpシリーズについて、「フルサイズ非積層センサーを電子シャッターだけで駆動しているため読み出しが遅く、14bit DNGで撮るなら実質的にポートレートや風景など“静的な被写体専用”と言ってよいほど制約が大きい」とかなり辛口に指摘しています。やはり動きものの撮影では、この評価を頭に入れておく必要があります。
また、1台ですべてを完結させたい人にも厳しい選択です。ボディ内手ブレ補正・ファインダー・メモリカードスロット2枚といった、今どきの“当たり前”をいくつも省いているため、安心感や汎用性ではどうしても他社のフルサイズ機に劣ります。Sigma BFについては「メモリーカードスロットを省いたミニマルなフルサイズカメラ」と紹介されており、その設計思想の原型がまさにfpだと感じられます。便利さよりも“面白さ”を優先できるかどうかが、向き不向きの分かれ目と言えるでしょう。
SIGMA fpの要素別レビュー早見表
評価項目 | 評価サマリ |
|---|---|
デザインと操作性 | 極端にミニマルな箱型で質感は高い一方、グリップ・EVF・物理ダイヤルが少なく“慣れとアクセサリー前提”の操作感 |
静止画画質 | 24.6MPフルサイズとして解像力・ダイナミックレンジ・色とも同クラス機と肩を並べる素直な優等生で、RAW現像耐性も高い |
AF・連写・バッテリー | 静止物には十分だがAF-Cと連写時の追従は弱く、電子シャッターのみでローリング歪みも出やすい上にバッテリー持ちも心許ない |
動画性能 | 超小型ボディながら4K 12bit CinemaDNGなど本格的なRAW動画に対応し、IBISなし・AF弱めという制約と引き換えに“絵作りの自由度”を手に入れた映像向き機 |
レンズ・拡張性 | Lマウントの豊富なレンズとシグマ純正アクセサリー、外部SSD・ケージ運用により、スナップ機からシネマリグまでモジュラー的に育てられる柔軟なシステム性 |
価格・ポジション | 中古相場ならフルサイズRAW動画機としてコスパは良好で、万能メイン機というより“尖った画と遊び心を求める人向けのサブ〜セカンドボディ”にハマる立ち位置 |
基本情報のおさらい:発売状況とスペック
SIGMA fpは2019年10月25日に発売されたフルサイズミラーレスで、発売時は「世界最小・最軽量のフルサイズミラーレス」として話題になりました。2025年には兄弟機のfp Lや新コンセプトのBFが登場し、fp/fp Lの生産は終了していますが、中古市場では今も安定して流通しています。ここではスペックと現行ラインナップの関係を簡潔に押さえておきましょう。
新型Sigma BFのレビュー詳細はこちら
発売状況と現行ラインナップの位置づけ
FPはフルサイズ移行を進めるシグマが、Lマウントアライアンスの一角として送り出した最初のフルサイズボディです。24.6MPのフルサイズBayerセンサーを採用し、スチルとシネマを等価に扱うコンセプトで開発されました。その後、61MPセンサーを積んだ高解像度モデルfp L、そして2025年に登場したミニマルUIのBFへと系譜は続いていきます。fpはそのなかで「もっともバランス型で、価格も手頃なベースモデル」という立ち位置になりました。
2025年時点では、新品の流通量は減りつつあり、中古がメインの選択肢になります。国内の中古ショップでは状態「美品」で14〜15万円前後が目安で、同クラスのフルサイズ機よりやや安い水準です。高解像度のfp Lは中古でおおよそ20万円前後になることが多く、解像度や用途を考えると、初めてfpシリーズを試すなら無印fpを選ぶ人が多い印象です。小型なサブ機として導入し、気に入ったらfp LやBFへステップアップする流れも現実的でしょう。
主要スペックのポイントだけ押さえる
センサーは有効約24.6メガピクセルのフルサイズBSI CMOSで、解像度は6000×4000ピクセル。レンズマウントはライカLマウントを採用し、シグマ純正だけでなくパナソニックやライカのLマウントレンズも使用できます。映像形式は4K UHD30pまで対応し、CinemaDNG RAW(最大12bit)とH.264/MOVの2系統を持つのが大きな特徴です。DPReviewも「このサイズのボディでRAW動画対応は非常に野心的」と評価しています。
項目 | 仕様・ポイント |
|---|---|
イメージセンサー | 有効約24.6メガピクセル・35mmフルサイズ BSI Bayer CMOS(6000×4000px) |
マウント | Lマウント(ライカ・パナソニック・シグマのLマウントレンズが使用可能) |
ISO感度 | 常用 ISO 100〜25600(拡張 ISO 6〜102400) |
AF方式 | コントラストAF・49点測距、顔/瞳検出AF対応 |
シャッター | メカシャッター非搭載・完全電子シャッターのみ |
連写性能 | 最大約18コマ/秒(RAW連写はバッファが浅く、長時間の連写には不向き) |
動画記録 | UHD 4K/24・25・30p、FHD最大120p、CinemaDNG RAW(最大12bit)/MOV(H.264, All-I) |
手ブレ補正 | 電子式手ブレ補正のみ(ボディ内光学式手ブレ補正[IBIS]なし) |
モニター | 3.15型・約210万ドット タッチパネル式LCD(固定式)、EVF非搭載 |
ボディサイズ | 約 112.6 × 69.9 × 45.3mm |
重量 | 約422g(バッテリー+SDカード含む) |
記録メディア | SD/SDHC/SDXCカード(UHS-II対応)+USB-C接続ポータブルSSD |
防じん防滴 | 約42カ所にシーリングを施した防じん・防滴構造 |
ボディサイズは112.6×69.9×45.3mm、重量はバッテリーとカード込みで約422gと、一般的なAPS-C機より小さいレベルです。シャッターは電子のみで、機械式シャッターは搭載していません。背面は3.15インチ約210万ドットの固定式タッチパネルで、EVFは非搭載。記録メディアはSDカード(UHS-II対応)1枚とUSB-C経由の外部SSDに対応します。スペック表だけを見ると「削りすぎでは?」と感じるかもしれませんが、ここからがfpらしさの本領発揮ポイントです。
デザインと操作性:ミニマルな箱型ボディの魅力とクセ
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SIGMA fpを手に取ると、まず「本当にこれフルサイズ?」と驚く人がほとんどです。余計な装飾を一切廃した箱型ボディは、前後をダイカスト製アルミ合金カバーで覆った堅牢な構造で質感も高く、持った瞬間に工業製品としての魅力が伝わってきます。一方でグリップがほとんどなく、ボタン類も最小限に絞られているため、一般的なミラーレスとは操作感がだいぶ違います。
外観と質感は「小さな金属ブロック」という感覚
ボディはシンプルな矩形で、前面にグリップの盛り上がりはほぼありません。Digital Camera Worldは「まるで小さな金属ブロックのようだが、手に持つと驚くほどしっくり来る」と表現し、作り込みの良さを評価しています。実際に持つと角の処理や塗装の質感が良く、所有欲を満たしてくれる仕上がりです。ストラップは、ボディ左右のネジ穴に同梱のストラップホルダーを装着して使う方式で、最初は少し戸惑うかもしれませんが、純正のハンドストラップと合わせると“つかんで持ち歩く道具”としてしっくり来ます。
ただし、長時間片手でホールドするには少々疲れやすいのも事実です。純正の小型グリップ(HG-11)や大型グリップ(HG-21)を追加すると握りやすさが大きく改善されるので、スチル用途が中心ならグリップの導入はほぼ必須と言っていいでしょう。海外レビューでも「素のままだとグリップが浅く手に食い込むが、専用グリップを付けると小型ながら安心感のある持ち心地になる」といった声があり、アクセサリー前提の設計思想が見えてきます。
スチル/シネ切り替えUIとボタン配置
fpの操作体系でユニークなのが、上面のStill/Cineスイッチです。ここを切り替えるだけで、メニュー構成やクイック設定画面が静止画用・動画用にガラッと変わります。DPReviewは「静止画と動画を同じ比重で扱うユーザーにとって、このUIは非常に合理的」と評価しており、実際に使ってみると切り替え時のストレスが少ないことに気づきます。設定項目も必要なものだけを大きなアイコンで並べたシンプルな構成で、慣れてくるとメニュー深掘りの頻度は減っていきます。
一方で、モードダイヤルや前後ダイヤルを省いたことによる不便さもあります。露出モードはボタンと背面ダイヤルの組み合わせで変える必要があり、他社ハイエンド機から乗り換えると最初は戸惑うでしょう。また、AFポイントを動かす際も小さなジョイスティックでポチポチと操作する必要があり、俊敏さには欠けます。The VergeがBFについて語った「ミニマルさと機能性の間の綱渡り」という印象は、fpのUIにも通じる部分があります。
静止画画質レビュー:解像感と色づくりのバランス

画質面でのSIGMA fpは、24.6MPフルサイズ機として非常に素直で扱いやすい出力をしてくれます。特別なクセはないものの、シグマらしい発色とトーンの滑らかさがあり、RAW現像の耐性も十分です。DPReviewやDigital Camera Worldのテストでも、同クラスのフルサイズ機と比較して大きな弱点は見当たらないという評価が多く見られます。
24.6MPフルサイズセンサーの描写と解像感
解像度は2400万画素クラスのフルサイズとして標準的ですが、レンズさえ良ければ細部までしっかり描き切る印象です。実写レビューでは、建築や風景を低感度で撮影した際の解像感に対して「α7 IIIやZ6などとほぼ同等で、ディテールの描写に不満はない」というコメントが多く、解像性能でfpだけが劣るということはありません。シグマのArtやContemporaryレンズとの組み合わせなら、周辺までシャープな描写が楽しめます。
RAWファイルをLightroomなどで現像してみると、シャドウを持ち上げても破綻しにくく、ダイナミックレンジも充分に広いことが分かります。Digital Camera Worldは「解像度・ノイズ・ダイナミックレンジはいずれも24MPクラスのフルサイズ機とほぼ同等で、ISO1600を超えるあたりからダイナミックレンジがやや落ちてくる」と分析しており、普通の撮影ならISO3200程度までなら迷わず使える印象です。トリミング耐性も良好で、スナップで構図を追い込めなかったカットを後から整える余裕もあります。
カラーモードとトーン再現の気持ちよさ
fpの楽しさを語るうえで欠かせないのが、豊富なカラーモードです。スタンダードやビビッドに加え、「ティール&オレンジ」「シネマ」「フォレストグリーン」など、ファームウェアアップデートも含め現在は16種類のカラーモードを搭載し、それぞれにコントラストや彩度、トーンカーブを細かく追い込めます。PetaPixelは「どのカラーモードも個性がはっきりしていて、撮って出しで遊ぶだけでも1日楽しめる」と評しており、JPEG派にとっても魅力的なポイントです。
特にモノクロ系モードはトーンの階調が豊かで、ハイライトからシャドウまで粘りのあるグレーが続きます。露出を少しアンダー寄りにして撮ると、ストリートスナップやポートレートが一気に“作品寄り”の雰囲気に近づきます。こうした色づくりは、シグマが長年Foveon機で培ってきたノウハウがBayer機にも活かされている部分でしょう。一方で、センサー自体はソニー系の汎用センサーと見られており、「画質そのものはライバルと同レベル、fp独自の味はカラーモードで付けていく」というのが正直なところです。
AF・連写・バッテリー:快適さを左右するポイント

SIGMA fpの評価を語るとき、必ず話題に上がるのがAF・連写・バッテリーの3点です。ここは長所というより「割り切りが必要な部分」であり、使う前に理解しておくと後悔が少なくなります。海外レビューでも「AFが最大の弱点」とする声が多く、その代わりに高画質とコンパクトさを得ている構図だと捉えると分かりやすいでしょう。
コントラストAFの性格と連写性能のクセ
fpのAFはコントラスト検出のみで、測距点は49点。静止物に対しては精度も悪くなく、しっかり合えば安心して使えますが、動きものに対する追従は得意ではありません。PetaPixelはfp Lのレビューで「動体でも静止体でもAF-Cはほとんど使い物にならず、MFかAF-Sを使った方がよい」と厳しく評しており、無印fpもAFの傾向は概ね同じです。被写体認識や高度なトラッキングを備えたソニーやキヤノンと比べると世代差を感じる部分でしょう。
連写は電子シャッターのみながら、最大18コマ/秒というスペックが用意されています。ただしローリングシャッターの影響で、速いパンや動きのある被写体では歪みが出やすくなります。スペック上は高速ですが電子シャッターのみのためローリングシャッターの影響が出やすく、実用的な場面は限られます。現実的には3〜5コマ/秒程度で落ち着いて撮るのがおすすめです。そのぶんフォーカスピーキングや拡大機能が優秀で、置きピンやMFでじっくり撮るスタイルと相性が良いと感じるユーザーも多いです。
バッテリー持ちと熱の出方はどうか
バッテリーはBP-51を採用し、CIPA基準で約280枚前後とされます。実際の使用感でも「一日スナップに出るなら最低2〜3本は欲しい」という声が多く、電池持ちに関してはあまり期待しない方が無難です。特にRAW+JPEGや動画を多用すると減りが早く、USBモバイルバッテリーからの給電運用を前提にしておいた方が安心でしょう。小型ボディで電池容量に限りがあることを考えると、ここは避けられないトレードオフと言えます。
動画撮影時の発熱については、4K RAWを長回しするとさすがに本体が熱くなりますが、現場のレビューを見る限り「室温20℃前後なら実用上問題ない」という意見が多いです。Digital Camera Worldも「長時間撮影で多少の温度上昇はあるが、警告表示が頻発するようなレベルではない」としており、熱暴走で止まりがちな他社の一部機種と比べると安定している部類です。ただし真夏の屋外撮影では冷却ファン付きの外部ケージなどで対策した方が安心でしょう。
動画性能レビュー:シネマ寄りのフルサイズ動画機として

SIGMA fpを検討する人の多くは、「フルサイズでRAW動画を撮りたい」「シネマ寄りの映像制作に挑戦したい」という動機を持っています。実際、CinemaDNG RAWや外部レコーダーとの連携を考えると、fpは価格帯のわりに非常に本格的な動画機として使えるポテンシャルがあります。一方でIBIS非搭載・AF性能などの制約もあるため、向くスタイルと向かないスタイルがはっきりしているのも特徴です。
4K/12bit CinemaDNGと外部レコーダー連携
fpはUHD 4Kで最大30pまで対応し、内部では8bit H.264/MOV記録、外部SSDには最大12bit CinemaDNG RAWでの収録が可能です。さらにAtomos Ninja VシリーズやBlackmagic Video Assistと組み合わせれば、ProRes RAWやBRAWとして外部収録も行えます。Digital Camera Worldは「このサイズのカメラでシネマグレードの作業フローに乗せられるのは驚き」とし、ハイエンドな映像制作環境への入り口として高く評価しています。
カラーモードやトーンカーブ調整を活用すれば、擬似的なLog撮影に近いフラットな映像も作れます。8bit内部記録でもRAWほどではないものの色補正の耐性は高く、YouTubeやMVなど多くの案件に十分対応できるレベルです。実際、fpで撮影しDaVinci Resolveでグレーディングしたフッテージは、ローコストな構成とは思えない質感になります。映像編集が好きな人ほど、このカメラの面白さを感じやすいでしょう。
実際の運用で見えてくる強みと弱み
ただし、動画撮影時のAF性能は静止画同様あまり頼りになりません。特にワンマンでのラン&ガン撮影では、AFが迷う場面が出やすく、撮影スタイルを工夫する必要があります。DPReviewも「本格的に動画で使うならマニュアルフォーカスとピント送りを前提に考えた方がいい」と指摘しており、シネマレンズやフォローフォーカスとの組み合わせを想定した設計だと割り切ると理解しやすいです。フォーカスピーキングは精度が高く、MF派にとってはむしろ使いやすいとも言えます。
また、ボディ内手ブレ補正がないため、手持ちで歩き撮りをするとどうしても揺れが目立ちます。ジンバルや一脚、リグなどを組んで運用する前提で考えると、fpは非常に扱いやすい“モジュール”になりますが、「カメラ1台だけで完結したい」というニーズには応えきれません。The VergeがBFを評した「ミニマルさと機能性の間の綱渡り」という表現は、そのままfpの動画運用にも当てはまります。準備をきちんと整えられる現場ほど、fpの動画性能は活きてきます。
SIGMA fpの競合比較
主要な競合モデルの「立ち位置」を比較していきましょう。各社が小型フルサイズ機に求めた方向性は大きく異なり、SIGMA fpがどこを狙ったカメラなのかもここでクリアになります。ソニーは“万能性”、パナソニックは“ハイブリッド性能”、シグマは“ミニマルで尖らせる”という思想がはっきり分かれており、比較するとfpのキャラクターがより鮮明に浮かび上がってきます。
カメラ | 立ち位置 |
|---|---|
SIGMA fp(本機) | ポケットサイズのRAW動画対応フルサイズ |
ソニー α7C II | IBISと最新AFを備えた万能小型フルサイズ |
LUMIX S5II | Lマウントの王道ハイブリッド機(写真+動画) |
SIGMA fp L | 61MP高解像を活かす静止画寄りの兄弟機 |
SIGMA BF | 位相差AFと内蔵SSDを備えたミニマル高級機 |
競合比較①:α7C II・LUMIX S5IIなど小型フルサイズとの違い
ここからは、ソニーα7C IIやLUMIX S5IIなどの小型フルサイズ機と比較しながら、SIGMA fpの立ち位置を整理していきます。同じ「小さくてフルサイズ」というくくりでも、各社の思想はかなり違います。実際のレビューを眺めても、α7C IIやS5IIは“万能型”、fpは“尖った専門職”という方向性の違いで語られることが多く、どちらが優れているかというより“何を優先するか”で選び分けるイメージに近いです。
サイズ・IBIS・ファインダーの有無で見る差
ソニーα7C IIはボディ内手ブレ補正とEVFを備えた小型フルサイズ機で、重量約514gとfpより重いものの、ファインダーを含めたトータル性能で見ると“全部入り”に近い存在です。LUMIX S5IIもIBISやバリアングルモニター、デュアルカードスロットなどを備え、オールマイティなハイブリッド機として高く評価されています。対してfpはIBISもEVFもデュアルスロットも省き、その代わり世界最小クラスのサイズとシンプルな構造を手に入れています。
結果として、ファインダーを覗いて安定した姿勢で撮るスタイルにはα7C IIやS5IIの方が向きますが、ジャケットのポケットに放り込んでおく“持ち歩きスナップ機”としてはfpが群を抜いて軽快です。海外レビューでは「ボディサイズはコンパクトカメラ並みだが、出てくる画はしっかりフルサイズ」というギャップがしばしば強調されており、この点に価値を感じるかどうかが判断ポイントになるでしょう。
AF・動画機能・信頼性での比較
AFやトラッキング性能、被写体認識の精度では、α7C IIやS5IIが圧倒的に有利です。α7C IIは人物・動物・鳥・車など多彩な認識に対応し、スポーツや子ども撮影でも安心感があります。S5IIも像面位相差AFを採用し、動画AFの追従性が大きく改善されました。一方でfpのコントラストAFは、静物やゆっくりしたシーンなら問題ないものの、動体やワンマンオペ撮影ではどうしても弱さが目立ちます。
動画機能も、スペックシート上だけ見るとS5IIの6K記録やα7C IIの10bit記録が優位に見えますが、fpはRAW動画対応という一点で他にはない魅力を持ちます。PetaPixelは「LOG撮影で十分な人にはソニーやパナソニックが良いが、RAW撮影と徹底的なグレーディングに魅力を感じるならfpはユニークな選択肢だ」と整理しており、編集スタイルによってベストな機種は変わります。信頼性やオールマイティさを最優先するならα7C IIやS5II、個性的な映像制作を楽しみたいならfp、という分け方がしっくり来るでしょう。
競合比較②:fp L・SIGMA BF・シネマ機との関係
同じシグマのfp LやBF、そしてBlackmagicやソニーZV-E1のような動画寄りモデルも、SIGMA fpを検討するときに候補に挙がりやすいカメラです。どれも一見似たようなコンセプトですが、解像度やUI、記録方式などが大きく異なります。海外メディアも「fpシリーズは兄弟でも性格がまるで違う」とコメントしており、違いを把握しておくと選びやすくなります。
fp L・SIGMA BFとの違いと棲み分け
fp Lは61MPの高解像度センサーを搭載した兄弟機で、細部描写やクロップ耐性を重視するなら非常に魅力的です。PetaPixelのfp Lレビューでも、61MPセンサーによる風景・商品撮影での解像力を高く評価する一方で、ローリングシャッターの強さやAF-Cの信頼性の低さを弱点として挙げています。静止画特化でじっくり撮るならfp L、スナップや動画も混ぜるなら無印fpのバランスが良い、というのが多くのユーザーの実感です。
2025年に登場したSIGMA BFは、24.6MPセンサーに戻しつつ、位相差AFや6K動画、230GB内蔵SSDなどを搭載した新コンセプト機です。テック系メディアThe VergeはBFを「メモリーカードスロットを持たないミニマルなフルサイズカメラ」と紹介し、操作性やデザインを高く評価する一方で、メモリーカード非対応やIBIS非搭載といった割り切りにも触れています。価格はfpより高く、より“趣味性の高い高級機”という位置づけなので、コスパ重視なら中古のfp、デザインと最新機能重視ならBFという選び方になるでしょう。
BlackmagicやZV-E1など動画特化機との比較
動画特化機としては、Blackmagic Pocket Cinema CameraシリーズやソニーZV-E1などが比較対象になります。Pocket 4K/6Kはシネマ用コーデックや大型モニターを備え、完全に動画専用機として設計されていますが、ボディはfpより大きく重いです。ZV-E1はAI被写体認識と優れた動画AF、IBISを備えたVlog向けフルサイズ機で、手持ち撮影の快適さではfpを圧倒します。
ただし、どちらも静止画機能は限定的で、写真と動画を同じくらい楽しみたい人にはfpの方がバランスが良い場合があります。海外のフォーラムでも「BMPCCは完全に動画専用なので、静止画も撮りたい自分にはfpがちょうどいい」といった声があり、ハイブリッド運用を重視するか、完全に動画に振り切るかで最適解は変わります。RAW動画の質とフルサイズスチルの両方を1台で楽しみたいならfp、動画だけならBMPCCやZV-E1という整理が分かりやすいでしょう。
購入前チェックと選び方:自分にとって“正解”か見極める
ここまで見てきたように、SIGMA fpは明確な長所と弱点を持ったカメラです。最後に、購入前にチェックしておきたいポイントを整理しつつ、自分にとって“正解の一台”になり得るかどうかを考えてみましょう。海外レビューでも「fpはメインではなく、強烈な個性を持つサブ機として輝く」という声が多く、ポジションをどう捉えるかも重要な視点になります。
導入前に確認しておきたいチェックポイント
まず、自分が撮るシーンの8割は何かをイメージしてみてください。家族や子ども、スポーツなど動きものが多いなら、AFの弱さや電子シャッターによる歪みがストレスになる可能性があります。逆に、風景・スナップ・テーブルフォト・ポートレートなど、比較的じっくり撮るシーンが多いならfpの弱点はそこまで気にならず、むしろコンパクトさと画質のバランスが輝きます。スチルより動画の比率が高い人は、RAW動画の扱いにどこまで時間を割けるかも考えておくと良いでしょう。
BFのレビューでも「こうしたミニマルなカメラは使い手側にも一歩踏み込んだ工夫を求める」といった趣旨のコメントが見られますが、fpもまたユーザー側の積極的な工夫を前提とした道具です。そのスタイルが楽しめそうかどうかが、購入を決めるうえで大きな指標になるはずです。
こんな人ならSIGMA fpは“刺さる”一台になる
最後に、fpが特に刺さりやすいタイプを挙げるなら、まず「ガジェットとしてのカメラが好きで、自分好みにカスタムするのが楽しい人」です。小さな金属ブロックにレンズやアクセサリーを組み合わせていく過程そのものが趣味になるので、結果だけでなくプロセスも楽しめるタイプとは相性抜群です。次に、「RAW現像やカラーグレーディングが好きで、作品づくりの工程をじっくり味わいたい人」。CinemaDNGや豊富なカラーモードは、そうしたクリエイティブな欲求にしっかり応えてくれます。
逆に、撮影は結果がすべてで「なるべく簡単に、失敗なく撮りたい」というスタイルなら、ソニーα7C IIやLUMIX S5II、Canon EOS R8といったもっと万能なカメラの方が幸せになれるでしょう。SIGMA fpは、少し不便だけれど、その不便さも含めて愛せる人にこそおすすめしたい一台です。そう感じたなら、中古ショップで実機を触ってみて、シャッターを切ったときの感触やUIの雰囲気を自分の手で確かめてみてください。
SIGMA fpのレビューまとめ
SIGMA fpは、世界最小クラスのフルサイズボディに24.6MPセンサーとRAW動画機能を詰め込んだ、極めて個性的なカメラです。AFやIBIS、バッテリーなど弱点もはっきりしていますが、そのぶんモジュラー性と画質、所有する楽しさに振り切った設計になっています。スナップや作品づくり、シネマ寄りの映像制作をじっくり楽しみたい人にとって、fpは「小さな相棒」として長く付き合える存在になるはずです。気になった方は、まず中古ボディ+小型単焦点あたりから試してみて、自分の撮影スタイルとどれだけフィットするかをぜひ確かめてみましょう。
新型Sigma BFのレビュー詳細はこちら
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