パンフォーカスとは?計算・やり方・設定までパンフォーカス活用術解説

パンフォーカスとは?計算・やり方・設定までパンフォーカス活用術解説

風景写真やスナップを撮っていると、「手前から奥まで全部くっきり写したい」「パンフォーカスのやり方が知りたい」と感じる場面が出てきますよね。パンフォーカスは単に「絞るだけ」のテクニックではなく、被写界深度やハイパーフォーカル距離を理解してこそ安定して再現できる撮り方です。この記事では、パンフォーカスとは何かという意味の基本から、パンフォーカス設定の具体例、ハイパーフォーカル距離のシンプルな計算方法、さらに向いているレンズやカメラまでを一気に紹介しします。

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筆者
みんカメ編集部
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この記事のサマリー

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パンフォーカスは被写界深度を活かして手前から奥までシャープに見せる撮影手法で、風景・スナップ・記録写真に有効です。

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絞り・焦点距離・ピント位置・センサーサイズの4要素を理解すると、パンフォーカスを狙って再現できるようになります。

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ハイパーフォーカル距離を使えば、「広角+F8前後+数メートル先へのピント」で効率よくパンフォーカスを作れます。

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フルサイズ/APS-C/マイクロフォーサーズそれぞれで、具体的なパンフォーカス設定例とレンズ選びのポイントを整理しています。

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回折ボケやブレを避けるコツと、公園・街角でできる練習メニューで、今日から自分の機材でパンフォーカスを体得できます。

目次

パンフォーカスとは?意味とメリットを整理しよう

パンフォーカスとは、かんたんに言うと「手前から奥まで、写真のほぼ全部にピントが合っているように見える状態」のことです。背景を大きくぼかす写真とは逆で、その場の雰囲気や情報をくまなく見せたいときに向いています。「画面全体がはっきり見える写真」がパンフォーカス、というイメージを持っておくと入りやすいです。

パンフォーカスの基本定義

レンズの仕組みとして、実際にピントが合うのは“ある一枚の面”だけですが、その前後の少しボケた部分も、人の目には「ピントが合っているように見える範囲」があります。この“見た目として許せる範囲”を広げることで、手前から奥までシャープに見える状態を作るのがパンフォーカスです。

この広い“ピントが合って見える範囲”のことを被写界深度と呼び、被写界深度を深くすればするほどパンフォーカスに近づきます。絞り値(F値)、焦点距離、ピントを置く距離の組み合わせで調整していきます。

よくある誤解に「無限遠にピントを合わせればパンフォーカスになる」というものがありますが、実際は手前がボケやすく、全体がシャープになりません。重要なのは、手前と奥のバランスが良くなる“ちょうど良いピント位置”を選ぶことです。

ボケ写真との違いと使い分け

ボケを活かす写真は、背景を大きくぼかして主役だけを目立たせるスタイルです。視線をコントロールしやすく、ポートレートなどでよく使われます。一方、パンフォーカスは画面全体をしっかり見せるための撮り方です。街の看板や歩いている人、建物の形など、その場の空気感を伝えたいスナップや風景では非常に相性が良いです。

写真を撮るときに「主役だけを見せたいのか」「その場全体を見せたいのか」を考えると、ボカすのかパンフォーカスにするのか判断しやすくなります。

パンフォーカスが持つ実用的なメリット

パンフォーカスは、表現面だけでなく実用面でもメリットがあります。画面全体にピントが回っているため、多少ピント位置がズレても致命的な失敗になりにくく、スナップ撮影では“一瞬の決定的瞬間”を逃しにくくなります。

また、風景写真では手前の草花から遠くの山までくっきり写せるので、プリントしても隅々の情報がきれいに残ります。不動産写真、工事記録、商品撮影など、「全体をはっきり読める写真」が求められる場面でも大活躍します。

パンフォーカスを覚えると、作品づくりにも観察記録にも対応できるようになり、写真表現の幅が一気に広がります。

パンフォーカスが活きる撮影シーンと向いている被写体

パンフォーカスはどんなシーンでも万能というわけではありません。風景・スナップ・建築・旅写真など、特にパンフォーカスと相性の良い場面を押さえておくと、「ここはパンフォーカスに切り替えよう」という判断がしやすくなります。具体的なシーンをイメージしながら、自分の撮影スタイルに当てはめて考えてみましょう。

風景・都市景観でのパンフォーカス

最も典型的なのが、山岳風景や海岸線、街の俯瞰などの風景写真です。手前に岩や草花、奥に山やビル群を配置し、それらすべてをパンフォーカスで写し込むと、画面全体の情報量が一気に増えます。

このとき、広角レンズでF8〜F11程度まで絞り、前景と遠景の中間あたりにピントを置くと、比較的簡単にパンフォーカスが成立します。被写界深度が深くなりやすい広角側を使うこと、そして「前景・中景・遠景」の3層を意識して構図を組むことがポイントです。

都市景観でも同様で、高層ビル群や路地裏のスナップをパンフォーカスで撮ると、細かな看板や窓のディテールまでしっかり残り、街そのものの質感を伝えやすくなります。

スナップ・ストリート撮影でのパンフォーカス

ストリートスナップでは、じっくりピントを合わせる時間が取れないことが多く、オートフォーカス任せだとシャッターチャンスを逃すこともあります。そこで「F8・広角・一定距離にピント固定」というパンフォーカス設定にしておくと、構えてすぐ切れる“ゾーンフォーカス的な使い方”が可能になります。

例えば、35mm判換算で28mm前後のレンズをF8に絞り、3〜4m付近にピントを固定しておけば、おおむね1.5m前後から遠景まで実用上十分なシャープさを保てます。厳密な値はハイパーフォーカル距離の計算条件によって変わるので、詳細は後述のハイパーフォーカル距離で解説します。

「いつでも撮れる状態で街を歩きたい」というスナップ派には、パンフォーカス設定は非常に頼もしい選択肢になります。

記録写真・商品撮影でのパンフォーカス

不動産の室内写真、展示会の記録、現場写真などでは、「どこにピントがあるか」よりも「全体が読めるかどうか」が重要です。このような用途では、パンフォーカスを意識して撮ることで、後から細部を拡大して確認しやすくなります。

商品撮影でも、「全体像を見せたいカット」はパンフォーカス寄りが向いています。F値を少し絞り、被写体全体にピントを回しつつ、背景の情報は抑えるといったバランスをとると、見やすく実用性の高い写真になります。

作品作りと記録撮影のどちらでも、パンフォーカスを使い分けられるようになると、撮影の引き出しが一段増えた感覚を持てるはずです。

被写界深度とパンフォーカスの関係を理解する

パンフォーカスを安定して再現するには、被写界深度が何で決まるかを押さえておく必要があります。被写界深度は、絞り(F値)、焦点距離、被写体までの距離、そしてどこまでボケを許容するかという基準によって変化します。ここを理解しておくと、パンフォーカスのコントロールも見通しがよくなります。

要素

ポイント

F値(絞り)

F8〜F11にするとピントが合う範囲が広くなる

焦点距離(mm)

広角(24〜35mm)がパンフォーカスに向いている

ピント位置

数メートル先に置くと手前〜奥までシャープになりやすい

センサーサイズ

小さいほど深く見える(スマホ・MFTが有利)

基本セット

広角 × F8 × 数mピント=まず失敗しない基本形

被写界深度を決める4つの要素

被写界深度とは、「ピントが合って見える範囲(奥行き)」のことです。F値を大きくして絞るほど被写界深度は深くなります。焦点距離は短い(広角)ほど深く、長い(望遠)ほど浅くなります。

さらに、被写体までの距離が遠くなるほど被写界深度は深くなり、近づくほど浅くなります。厳密には、被写界深度はレンズ側のパラメータ(焦点距離・F値・ピントを合わせる距離)と、「どこまでボケを許容するか」を表す許容錯乱円によって決まります。センサーサイズ自体が光学的に被写界深度を直接変えるわけではありませんが、同じ構図・同じ印刷サイズで比較すると、小さいセンサーではより短い焦点距離を使うことが多く、その結果として被写界深度が深く見える傾向があります。

パンフォーカスを狙うときは、「広角レンズ+少し絞る+被写体との距離を少し離す」という方向に各要素を寄せていくイメージを持つと、設定の考え方が整理しやすくなります。

F値と焦点距離の考え方

F値はパンフォーカス設定の中核です。「とにかくF22まで絞る」といった極端なやり方は、回折による解像度低下を招き、かえってシャープさを損なうことがあります。多くのレンズではF8前後が画質と被写界深度のバランスが良いとされることが多いです。

焦点距離については、24〜35mm相当(フルサイズ換算)あたりの広角域がパンフォーカスしやすいゾーンです。これより長い焦点距離でもパンフォーカスは可能ですが、必要なF値が大きくなり、シャッター速度やISOとのトレードオフが厳しくなります。

パンフォーカスを頻繁に使いたいなら、「広角寄りのレンズでF8〜F11を基本値にする」というシンプルな方針をベースにすると、実戦で迷いにくくなります。

センサーサイズと被写界深度の違い

センサーサイズそのものが被写界深度を直接変えるわけではありませんが、「同じ構図・同じ被写体の大きさ」で撮ろうとすると、小さいセンサーではより短い焦点距離のレンズを使う必要があります。焦点距離が短いほど被写界深度は深くなるため、マイクロフォーサーズやコンパクト機、スマホの広角カメラはパンフォーカスを得やすい傾向があります。

そのため、昔のパンフォーカスコンパクトデジカメや監視カメラでは、広角のパンフォーカスレンズを採用し、「60cm〜無限遠までほぼピント」という仕様がよく使われました。小型センサーと短い焦点距離を組み合わせた設計です。

一方、フルサイズ機は同じ構図を得る場合に長めの焦点距離を使うことが多く、そのぶん被写界深度が浅くなります。パンフォーカスを得るには、より広角側を使うか、絞りを一段〜二段分しっかり絞る必要がある、という違いを押さえておくと良いでしょう。

ハイパーフォーカル距離とパンフォーカス計算の基本

パンフォーカスを理屈で再現したいときに欠かせないのがハイパーフォーカル距離です。難しそうな名前ですが、考え方自体はシンプルで、「ここにピントを合わせれば、手前から遠くまで広い範囲にピントが合う距離」のことを指します。パンフォーカス計算の中心になる考え方なので、ざっくり押さえておきましょう。

ハイパーフォーカル距離とは何か

代表的な定義では、ハイパーフォーカル距離とは「レンズをその距離にピント合わせしたとき、無限遠からその距離の半分までが許容範囲内でシャープに写る最短距離」とされています。

例えば、ある条件でハイパーフォーカル距離Hが4mだったとします。このとき、ピントを4mに合わせると、2m〜無限遠までが実用上ピントが合っているように見える、というイメージです。これがパンフォーカスを論理的に作るときの基礎になります。

ハイパーフォーカル距離は、焦点距離f、F値N、許容錯乱円cを使って「H ≒ f² / (N×c)」という式で求められますが、現場ではスマホアプリやテーブルを使う方が現実的です。

簡易計算と実践的な目安

厳密な計算にはc(許容錯乱円)の値が必要ですが、実戦では「だいたいこのくらい」という目安を持っておけば十分です。例えば、フルサイズ24mm・F8で許容錯乱円0.03mm前後を前提にすると、ハイパーフォーカル距離Hはおよそ2.4mになります。この距離にピントを合わせると、その半分の約1.2mから無限遠までが許容範囲のピントになる、というイメージです。

同じくフルサイズ35mm・F8なら、Hはおよそ5.1mで、その半分の約2.5mから無限遠がピント範囲の目安になります。APS-Cの16mm・F11で許容錯乱円0.02mm前後を仮定すると、Hはおよそ1.2mとなり、その半分の約0.6mから無限遠までがカバーされます。

これらの数値は、センサーサイズや許容錯乱円の設定によって多少変わりますが、「広角レンズを少し絞り、ハイパーフォーカル距離かその前後にピントを置けばパンフォーカスに近づける」という感覚が掴めていれば、実践上は十分です。

アプリ・テーブルを使ったラクなパンフォーカス計算

最近はスマホアプリやWebのハイパーフォーカル距離計算ツールが充実しており、焦点距離とF値、カメラ機種を入力するだけでHと被写界深度の範囲を自動計算してくれます。

よく使う焦点距離・F値の組み合わせについて、あらかじめアプリで計算してメモしておくと、現場ではそのメモを見ながらピント位置を決めるだけで済みます。風景メインの方なら、「24mm F8」「20mm F11」など、数パターンに絞って覚えておくと使いやすいでしょう。

パンフォーカス設定の具体例(絞り・ピント位置・ISO)

ここからはパンフォーカスのやり方・設定をより具体的に見ていきます。フルサイズ、APS-C、マイクロフォーサーズそれぞれで、よく使う画角を前提に、現場でそのまま真似しやすい例を挙げます。実際の撮影環境によって微調整は必要ですが、ひとまずの基準として頭に入れておきましょう。

設定シーン別の設定早見表

設定シーン

焦点距離/F値の目安

ピント位置の目安

ISO/シャッター速度の考え方

フルサイズ(24mmで日中)

F8〜F11

約2.5〜3m(HF距離付近)

1/25秒以上。ブレ心配なら1/100秒へ。ISO100〜400(手持ち800〜1600)

フルサイズ(35〜40mmで日中)

F11前後

約5〜6m

上と同じ。望遠寄りなのでより速いシャッタースピードを意識

APS-C(16〜18mm)

F8

約3m

1m台〜無限遠までシャープ。街撮りに安定

マイクロフォーサーズ(12mm)

F8

約1.2m(半分の0.6m〜∞が実用範囲)

センサー特性で深くなりやすく安定

夜景・薄暗い場面(風景)

F5.6〜F8

HF距離付近

三脚推奨。1〜数秒でもOK。ISO100〜200

夜の街スナップ(手持ち)

F4〜F5.6

数m先

1/60秒以上。ISO3200〜6400で明るさを確保

フルサイズ機でのパンフォーカス設定例

フルサイズで代表的な風景用レンズである「24mm」を例に考えてみます。日中の風景なら、F8〜F11を基準に設定し、ハイパーフォーカル距離付近の2.5〜3mあたりにピントを合わせると、手前の前景から遠くの山までバランスよくパンフォーカスにしやすくなります。

シャッター速度は1/焦点距離以上(この場合1/25秒以上)を目安にしつつ、ブレが心配なら1/100秒程度まで速くし、不足分はISOで補います。三脚が使えるならISO100〜400で済ませ、手持ちならISO800〜1600あたりまで許容すると、実用的なシャッター速度を確保しやすくなります。

35mmや40mm付近でパンフォーカスを狙う場合は、ハイパーフォーカル距離がやや伸びるため、F11前後まで絞り、5〜6m付近にピントを合わせるイメージで調整すると良いバランスになります。

APS-C・マイクロフォーサーズでの設定例

APS-Cでは、標準ズームの広角側(16〜18mm)がパンフォーカスの主戦場になります。例えば、18mm・F8で3m付近にピントを合わせれば、おおむね1m台から遠景まで実用上十分なシャープさを確保でき、街歩きスナップでも扱いやすい設定になります。

マイクロフォーサーズなら、12mm・F8で許容錯乱円0.015mm前後を前提にすると、ハイパーフォーカル距離はおよそ1.2m、その半分の約0.6mから無限遠までがピント範囲の目安になります。小型センサー機では、同じ画角を得るために短い焦点距離のレンズを使うことが多く、その結果としてパンフォーカスを得やすいフォーマットと言えます。

どちらのフォーマットでも、基本は「広角+F8〜F11+ハイパーフォーカル距離付近にピント」をベースにし、状況に応じてF値とピント位置を微調整していく考え方で十分対応できます。

夜景・薄暗い場面でのパンフォーカス設定

夜景や夕景でパンフォーカスを使いたい場合、F11以上まで絞るとシャッター速度が極端に遅くなり、手持ちでは厳しくなります。この場合は、F5.6〜F8程度にとどめつつ、三脚を使うか、ISOをやや高めに設定するのが現実的です。

広角レンズなら、F5.6でもある程度の被写界深度が確保できるため、ハイパーフォーカル距離を意識しながら、被写体距離とのバランスで決めていきます。動きの少ない風景であれば、シャッター速度が1〜数秒程度になっても問題ありません。

手持ちで夜の街スナップをパンフォーカスしたい場合は、「広角・F4〜F5.6・ISO3200〜6400・1/60秒以上」を一つの目安として、許容できるノイズ量との折り合いをつけていくと、実戦的な設定が見つけやすくなります。

パンフォーカスに向いたレンズ・カメラ選び

パンフォーカスレンズと聞くと特別な専用レンズを想像するかもしれませんが、実際には「パンフォーカスしやすいレンズやカメラの組み合わせ」がある、という捉え方の方が実態に近いです。ここでは、広角単焦点やズーム、いわゆるパンフォーカスレンズ搭載カメラ、スマホとの付き合い方まで整理してみましょう。

広角単焦点・広角ズームを選ぶ理由

パンフォーカスを多用するなら、まずは「広角側がしっかり使えるレンズ」を一本用意するのがおすすめです。フルサイズで20〜35mm、APS-Cで14〜24mm前後、マイクロフォーサーズで10〜17mm前後が、風景にもスナップにも使いやすい範囲です。

広角ほど被写界深度が深くなるため、少し絞るだけでパンフォーカスに持ち込みやすくなります。ズームレンズであれば、パンフォーカスを狙う場面ではできるだけ広角側を使う癖をつけておくと、設定がシンプルになります。

単焦点レンズなら、F8前後まで絞ったときの解像感が高いモデルを選んでおくと、パンフォーカス時のキレも期待しやすくなります。

パンフォーカスレンズ搭載カメラとは

パンフォーカスレンズという言葉は、主にコンパクトデジカメや監視カメラ、アクションカムなどで使われることが多く、「ピント位置を固定し、小型センサーと絞りにより60cm〜無限遠程度までほぼ全部にピントが合うように設計された固定焦点レンズ」を指すケースが一般的です。

実際、古いパンフォーカスデジカメの仕様書を見ると、「通常撮影は60cm〜無限遠、マクロモードで数十cm」というような記載が少なくありません。レンズの絞り値と小型センサーを組み合わせることで、フォーカス機構を簡略化しつつ十分な被写界深度を確保しています。

一眼カメラでパンフォーカスを使う場合は、こうしたパンフォーカスレンズが必要というわけではなく、広角レンズ+設定で同じ状態を作り出すと考えれば問題ありません。

スマホカメラとパンフォーカスの関係

スマホの広角カメラは、センサーが小さく焦点距離も非常に短いため、もともと被写界深度が深く、日中の撮影では「ほぼパンフォーカス状態」になっていることが多いです。

そのため、スマホで撮った写真は「どこにでもピントが合っているように見える」一方、意図的に大きなボケを作るのが難しく、ポートレートモードなどの計算処理に頼る形になります。逆に言えば、スマホはパンフォーカス的な撮影には非常に向いているカメラと言えます。

一眼カメラでパンフォーカスを練習する前に、「スマホの画角・距離感を参考に広角レンズを選び、同じ感覚でF値と距離を調整してみる」というアプローチも有効です。

パンフォーカス撮影で失敗しやすいポイントと対策

パンフォーカスを目指して撮ったのに「なんとなく眠い」「思ったほどシャープじゃない」と感じた経験はないでしょうか。原因を分解すると多くの場合は、絞りすぎによる回折・シャッター速度不足によるブレ・ピント位置の選び方のどれかに行き着きます。それぞれの典型パターンと対策を押さえておきましょう。

絞りすぎによる回折ボケに注意

被写界深度を深くしようとしてF16やF22まで絞ると、回折現象によってかえって解像感が落ちることがあります。一般的には、APS-CサイズのカメラではF11〜F13あたりから、フルサイズではF13〜F16あたりから回折の影響が目立ち始めると言われています。

どうしても手前から奥までピントを回したいシーンではF16以上を使う場面もありますが、とりあえず絞り込めばシャープになるという考え方は危険です。まずはF8〜F11付近を基準にし、必要に応じて一段ずつ絞っていく方が、画質と被写界深度のバランスを取りやすくなります。

高画素機ほど回折の影響が見えやすくなるため、約5000万画素クラスのカメラでは特にF16以降の使い方に注意したいところです。

手ブレ・被写体ブレを切り分ける

パンフォーカスで全体をシャープにしたいとき、絞り込んだ結果シャッター速度が遅くなり、手ブレや被写体ブレが目立つケースも少なくありません。「1/焦点距離」以上のシャッター速度を最低ラインとして意識し、それを下回りそうなときはISOを上げるか三脚を使う判断が必要です。

ブレの原因が「手ブレ」なのか「被写体ブレ」なのかを撮影後にチェックしておくと、次回の対策が立てやすくなります。前者なら構え方や手ブレ補正の活用、後者ならシャッター速度をさらに速くする、といった具合に対処を分けていきましょう。

パンフォーカスはピント位置のシビアさをやわらげる一方で、シャープに見せたい範囲が広いため、ブレにはよりシビアになる必要がある、という点も意識しておきたいところです。

無限遠AF任せにしないピント位置の決め方

風景撮影でAFを無限遠側に任せきりにすると、手前の前景が思ったほどシャープにならないことがあります。パンフォーカスは「全体のバランス」が大事なので、ハイパーフォーカル距離付近や前景と遠景の中間あたりに意識的にピントを置く方が結果が安定します。

実戦では、ライブビューを拡大して手前・中景・遠景それぞれのシャープさを確認しながらピント位置を微調整すると、「ここなら全体の落としどころ」というポイントが見つかりやすくなります。風が強く前景が揺れている場合は、少しだけ前景寄りにシフトするなど、現場に合わせた調整も有効です。

「パンフォーカス=無限遠ピント」ではなく、「パンフォーカス=ハイパーフォーカル距離付近のピント」と捉え直すことで、失敗カットはかなり減らせます。

パンフォーカスのまとめ

パンフォーカスは、被写界深度を深くして手前から奥までシャープに見せる撮影方法であり、風景・スナップ・記録写真など幅広い場面で活躍します。その本質は「広角レンズ+適度な絞り+適切なピント位置(ハイパーフォーカル距離付近)」という組み合わせにあります。まずは24〜28mm相当の広角にF8をセットし、数メートル先にピントを置くパンフォーカス設定から試してみてください。今日紹介した練習メニューを一つ選んで実践し、自分のカメラとレンズでどこまでパンフォーカスにできるのかを体で覚えていけば、撮影の自由度は確実に広がっていきます。


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