
スローシャッターとは?やり方・設定・ポートレート応用まで完全ガイド
スローシャッターと聞くと、「難しそう」「三脚必須でしょ?」と身構える人も多いですが、実は“設定を一つ変えるだけ”で写真の世界が劇的に広がる、とても使いやすい撮影テクニックです。街の光跡、滝の白い絹のような描写、人の流れを残像として写す表現など、いつもの景色がスローシャッターを使うだけでまるで別の物語を持った写真に変わります。この記事ではスローシャッターとは?という基本から、失敗しないやり方、ポートレートへの応用、スマホでの楽しみ方までを丁寧に解説します。
この記事のサマリー

スローシャッターとは「シャッタースピードを意図的に遅くして動きや光を写し込む撮り方」だと理解する

一眼・ミラーレスだけでなく、スマホ+専用アプリや簡易三脚でも十分に楽しめる

ポートレートではスローシンクロや残像表現で他とは違う一枚が狙える

失敗の多くは「ブレ」「露出オーバー」「ピント」の3つに集約され、原因を知ればすぐ改善できる

身近な場所で反復して撮り比べることで、短期間でもスローシャッターの感覚が身につく
スローシャッターとは?まずは基本のイメージをつかもう

スローシャッターという言葉は知っていても、「どこからがスローなのか」「何ができるのか」が曖昧な人は多いはずです。ここでは難しい理屈を横に置き、まずは感覚的にスローシャッターの世界をイメージできるように整理していきます。
シャッタースピードと明るさ・ブレの関係
まずシャッタースピードは「どれくらいの時間、光をセンサーに当てるか」を決める要素です。速くすれば一瞬だけ光を取り込み、動きを止めたシャープな写真になります。遅くすれば長い時間光を貯めることになり、その間に動いたものがブレや軌跡として写り込みます。
多くのシーンでは手ブレや被写体ブレを避けるために、撮影者は無意識にシャッタースピードを速くしがちです。しかし「動きが写ること」自体は失敗ではなく、演出として活かせば武器になります。スローシャッターとは、このブレをあえてコントロールして写真の印象を変える撮り方だと考えると理解しやすいです。
例えば夜の道路で車のヘッドライトが線になって写った写真や、滝の水が絹のように滑らかに見える風景写真があります。あれはまさにスローシャッターの代表例です。肉眼では瞬間瞬間しか見ていないものを、時間をまとめて一枚に焼き付けるイメージだととらえてください。
スローシャッターで何が撮れる?代表的な表現イメージ
スローシャッターで狙える表現は大きく分けて「流れをなめらかにする」「光の軌跡を描く」「人や車を消す(目立たせない)」の三つです。水の流れ、雲の動き、夜の交通量、観光地の人混みなど、時間とともに変化する要素がある場所ほど効果が出ます。風景写真家が滝や海で長時間露光を多用するのもこのためです。
ポートレートでは、背景だけを流してスピード感を出したり、モデルの動きをあえて残像にして幻想的に見せることもできます。さらに、夜景ポートレートで人物をフラッシュで止めつつ、背景はスローシャッターでふんわり明るく写すテクニックもあります。静止画なのに動きが伝わる、そんな写真を作り出せるのがスローシャッターの魅力です。
スローシャッターのやり方:基本設定と撮影の流れ

実際にスローシャッターを試すとき、「どのモードにすればいい?」「シャッタースピードは何秒から?」と迷いやすいポイントがあります。順番を決めてしまえば毎回同じ流れでセットできるので、撮影前のチェックリスト感覚で覚えておきましょう。
撮影モードとシャッタースピードの決め方
一眼やミラーレスなら、まずモードダイヤルをシャッタースピード優先(S / Tv)に合わせます。スローシャッターではシャッタースピードを主体的に決めたいので、このモードがもっともシンプルです。値の目安としては、動いている被写体を「ブレさせ始めたい」なら1/30〜1/10秒程度、「しっかり流したい」なら1秒以上を狙うと変化が分かりやすくなります。
シャッタースピードを遅くするとその分だけ明るくなるため、絞り値とISO感度で光量を抑えていきます。基本はISOをできるだけ低く、絞りはF8前後を起点に調整すると、画質と被写界深度のバランスが取りやすいでしょう。最初はカメラ任せでOKなので、露出補正をマイナス寄りに振って白飛びを防ぎつつ、ヒストグラムを見ながら微調整する感覚を身につけていきます。
マニュアルモードが好きな人は、シャッタースピード・絞り・ISOをすべて自分で決めてもかまいません。ただ、スローシャッターを覚え始める段階では「シャッタースピードだけ自分で決める」というスタイルの方が迷いが少なく、被写体との向き合い方に集中しやすくなります。
三脚・レリーズを使った安定させるコツ
スローシャッターで失敗の原因になりやすいのが、カメラ全体のブレです。特に1/2秒以上になると、手ブレ補正が優秀なボディでも手持ちはかなりシビアになります。安定して撮りたいなら、三脚の使用を前提に考えた方がストレスが少ないでしょう。脚をしっかり広げ、センターポールを伸ばしすぎないようにすると振動に強くなります。
シャッターボタンを直接押すと、その瞬間の振動が写真に乗ってしまいます。セルフタイマーを2秒に設定するか、ケーブルレリーズ・ワイヤレスリモコンを使うと安心です。スマホ連携アプリからリモートシャッターが切れる機種も増えているので、夜景撮影では活用しない手はありません。
風が強い日は、三脚にカバンをぶら下げて重り代わりにするのも有効です。それでも揺れが気になるときは、構図を少し低くして重心を落とす、レンズのフードを外して風の影響を減らす、といった細かな工夫も効いてきます。
シャッタースピード別に見るスローシャッターの表現
同じ場所を撮っても、シャッタースピードが変わるだけで写真の印象はガラリと変わります。ここではよく使う秒数のゾーンごとに、どんな写り方になるのか、どんな被写体と相性がいいのかを具体的にイメージできるように整理していきましょう。
シャッタースピード別の表現早見表
シャッタースピード | どんな写り方になるか | 向いている被写体/シーン | 撮影のポイント |
|---|---|---|---|
1/30〜1/15秒 | わずかに動きがブレ始める。歩行の残像が軽く出る。 | 街スナップ/歩く人の雰囲気/軽い流し撮り | 手ブレ補正が効きやすいレンジ。まずここから練習すると変化が分かりやすい。 |
1/15〜1/8秒 | 人はしっかりブレる。背景はほぼ止められる。 | 人混みの“流れ感”/街の動き表現/軽い水の流れ | 被写体ブレを活かすレンジ。画面の主役をどこに置くか意識するとまとまる。 |
1/8〜1/2秒 | 強めの残像が出始める。水のディテールが失われる。 | 水辺(噴水・浅瀬)/駅ホームの人流/夜スナップ | 手持ちは厳しめ。三脚 or 固定推奨。構図の整理が重要。 |
1/2〜1秒 | 水が柔らかく伸び、光が流れる。肉眼とは違う世界に。 | 滝・渓流/夜景(看板やライト)/人の消し込み | NDなしでも夜なら使いやすい。人物撮影ではブレ注意。 |
1〜5秒 | 車のライトが軌跡になる。水が完全に“絹”の表現。 | 交差点の光跡/滝/波打ち際/観覧車 | 三脚必須。ISOをしっかり下げて白飛びを防ぐ。NDがあると昼間でも活用可能。 |
5〜15秒 | 夜景がくっきり写り、雲が滑らかに。光跡が長く伸びる。 | 高速道路の光跡/都市夜景/遊園地/星入り風景 | 露光オーバーになりやすいため、露出計より“完成イメージ”優先で調整する。 |
15〜30秒 | 暗い風景が浮かび上がる。薄い雲や星の動きが出る。 | 夜の街/星景の入口(星が少し流れる) | ノイズ増加に注意。長秒時NRをONにすると安定する。 |
30秒以上(バルブ) | 星の軌跡(スター・トレイル)/雲が帯状に。世界が抽象化。 | 星景写真/無人化した街/超長時間露光の作品撮り | 三脚の安定が最重要。リモートレリーズ必須。NDで日中も可能。 |
1/30〜1/8秒:日常の動きをほんのり演出するゾーン
このあたりは「スローシャッター入門ゾーン」と考えると分かりやすいです。手ブレ補正付きのボディや広角レンズなら、頑張れば手持ちでも撮れる範囲でありながら、歩いている人や流れる水がうっすらブレて写ります。街スナップで、背景はほぼ止めつつ人だけを少し流すといった表現にちょうど良いシャッタースピードです。
電車や車を流し撮りするときも、まずはこのレンジから始めると成功率が上がります。被写体のスピードに合わせてカメラを水平に振り、通過のタイミングに合わせてシャッターを切ると、背景が横方向にスーッと伸びた写真になります。失敗してもブレ方の傾向が見えやすく、練習の教材として非常に優秀なゾーンです。
水辺では波のディテールを少し残しつつ、柔らかさもプラスしたいときに便利です。海辺の波打ち際や噴水などで試してみると、シャッタースピードの変化が仕上がりにどう効いてくるのか実感しやすいでしょう。
1秒以上:水や光をなめらかに、時間をまとめて写すゾーン
シャッタースピードが1秒を超えてくると、肉眼とは完全に別世界の描写になっていきます。滝や渓流では水が糸のように滑らかに伸び、街灯や車のライトは長い線となって画面を走ります。長時間露光の風景作品でよく見る「絹のような水」「光の軌跡」は、このゾーンからが本番です。
夜景では数秒〜十数秒の露光で、暗く沈んでいた街全体がじんわりと浮かび上がります。高速道路を見下ろす位置から撮れば、ヘッドライトとテールライトが赤と白の帯となり、都会的な雰囲気を強く演出できます。星空や雲の動きを取り入れたいときは、30秒前後からバルブ撮影に切り替えて、複数分単位の露光を試してみるのも良いでしょう。
露光時間が長くなるほど、ブレやノイズの影響も増えるため、三脚の安定性やノイズリダクションの有無が画質に効いてきます。少しずつ露光時間を変えながら撮り比べて、自分の機材が「どこまで攻められるか」を把握しておくと、いざというとき迷わず設定を決められます。
スローシャッター ポートレートの基本と応用テクニック

スローシャッターは風景だけのテクニックだと思われがちですが、人物撮影との相性も抜群です。夜景の雰囲気を活かしたポートレートや、ダンスの動きを残像で写すアート寄りのカットなど、少し工夫するだけで「見たことある写真」から一歩抜け出した作品になります。
夜景ポートレートはスロー+ストロボで決める
夜の街でポートレートを撮ると、背景はきれいでも人物が真っ暗、あるいは逆に人物だけ明るくて背景が沈むという悩みが出がちです。ここで活きてくるのが、スローシャッターとフラッシュを組み合わせた「スローシンクロ」です。背景をスローシャッターでじっくり露光しつつ、人物はストロボの一瞬の光で止めてしまう考え方になります。
例えばシャッタースピードを0.5〜1秒に設定し、ISOと絞りで背景の明るさを調整します。そのうえで、人物に向けて弱めのフラッシュを焚くと、顔はシャープで背景はふんわり明るいバランスの良い一枚になります。後幕シンクロを使えば、人物が少し動いても最後の瞬間にピタッと止まった形で写り、違和感の少ない残像表現が可能です。
スローシンクロでは、被写体に「シャッター開いている間はできるだけ動かないでください」と一言伝えておくと成功率が大きく上がります。明るさや色味はあとからRAW現像で整えられるので、まずは「背景と人物の両方をちゃんと写す」ことを最優先に考えましょう。
ブレをあえて残してドラマを作るポートレート
人物写真は「ブレてはいけない」と思い込みがちですが、意図的なブレはむしろ感情やストーリーを強く感じさせます。ダンサーの手先や髪の動きだけを流したり、歩いているモデルの足元をブレさせて躍動感を出したりと、アイデア次第で表現の幅は無限に広がります。
コツは、どこを止めてどこを流すかを事前に決めておくことです。顔や目だけを止めたいなら、顔に当たるようストロボをセットし、手や衣装の動きはスローシャッターに任せます。背景を流したいときは、人物の動きに合わせてカメラを振る流し撮りポートレートも効果的です。背景が横方向に流れ、人物だけが浮き上がったような印象になります。
もちろん、すべてのポートレートでスローシャッターを使う必要はありません。通常のカットを一通り撮ったうえで「最後の数枚だけ遊んでみる」くらいの感覚で取り入れていくと、撮影現場の雰囲気を壊さずにチャレンジできます。
機材選び:カメラ・レンズ・NDフィルターのポイント
スローシャッター自体はどんなカメラでも実践できますが、機材選びで押さえておきたいポイントがあります。
カメラボディでチェックしたい機能
まず注目したいのは、シャッタースピードの下限とバルブ撮影の有無です。多くのボディは30秒までの設定とバルブモードを備えていますが、エントリー機やコンデジではここが制限されている場合もあります。星空や街の光跡を本格的に狙うなら、バルブ対応の機種を選んでおくと安心です。
次に、ボディ内手ブレ補正の性能もスローシャッター撮影では大きな武器になります。最近のフルサイズ機やハイエンドミラーレスでは、5〜7段分の補正をうたうモデルも増えており、広角域なら1秒前後の手持ち撮影が現実的になってきました。とはいえ、長秒露光を本気で行うなら三脚前提と割り切ったほうが安定するので、補正は「保険」と考えておくとバランスが良いでしょう。
最後に長時間露光時のノイズ対策機能も確認しておきたいポイントです。カメラ側の長秒露光ノイズリダクションは、露光後に同じ時間だけ暗フレームを撮影してノイズを減らす仕組みです。待ち時間は増えますが、星空や夜景では効き目が大きいので、オンオフを使い分けながら活用していきましょう。
NDフィルターとレンズの選び方
昼間にスローシャッターを使うなら、NDフィルターはほぼ必須のアクセサリーです。晴天の昼間に1秒以上の露光を試すと、絞りをF16やF22まで絞っても露出オーバーになってしまうことがよくあります。そこでND8やND64、ND1000といったフィルターで光量を減らし、意図したシャッタースピードまで露光時間を引き延ばすわけです。
最初の一本としておすすめなのは、6〜10段分程度の減光ができるND64かND1000です。滝や川の流れ、日中の雲の動きを滑らかにしたいとき、多くのシーンで使い回せます。可変NDフィルターも便利ですが、極端に絞るとムラが出る製品もあるので、風景中心なら固定NDを複数持つ方が安心です。
レンズは広角〜標準域が扱いやすく、ブレにも強いのでスローシャッターの練習相手に向いています。望遠で流し撮りをする場合は、ブレやすさが一気に増すので、手ブレ補正付きのレンズを選び、シャッタースピードもやや速めから試していくと失敗が減ります。
スマホで楽しむスローシャッター撮影
スローシャッターは一眼がないと無理と思っている場合、それは少しもったいないかもしれません。最近のスマホはセンサーや処理性能が大幅に向上しており、アプリや専用モードを使えば、かなり本格的な長時間露光表現が楽しめます。
長時間露光アプリと標準カメラ機能を活用する
iPhoneやAndroidには、シャッタースピードやISOを手動設定できるカメラアプリが多数あります。代表的なものとしてProCam、NightCap Camera、Slow Shutter Cam、夜撮カメラなどがあり、近年も長時間露光向けアプリとして広く利用されています。
これらのアプリは、アナログ的にシャッタースピードを設定できるものと、複数枚の画像を合成して「長時間露光風」の一枚を作るものに大きく分かれます。光跡や水の流れをしっかり出したいなら前者、手持ちでもそれなりに楽しみたいなら後者が便利です。撮影前にアプリのヘルプを軽く読み、どのパターンに強いのか把握しておくと無駄がありません。
また、Google Pixelシリーズの「長時間露光」モードやアクションパンのように、AI処理で擬似的なスローシャッター効果を加えるスマホも増えています。こうしたモードはブレを自動で抑えつつ、動きのある部分だけを滑らかにしてくれるので、初めてでも失敗が少なく楽しめるのが大きなメリットです。
一眼やミラーレスがなくても、スマホだけでスローシャッター的な表現を楽しむことは十分できます。最近は長時間露光をシミュレートするカメラアプリも増えており、SNSにはスマホで撮影された光跡写真も多く投稿されています。
スマホ三脚と簡易NDで一歩進んだ表現へ
スマホ長時間露光のクオリティを一段引き上げたいなら、小型のスマホ三脚とホルダーを用意すると世界が変わります。テーブルの上や手すりに置くだけでは微妙に揺れてしまうシーンでも、しっかり固定できるだけでシャープさが格段に向上します。Bluetoothシャッターボタン付きのグリップを組み合わせれば、遠隔でシャッターを切れるため、夜景自撮りにも便利です。
明るい時間帯にスローシャッターを使いたい場合は、スマホ用のクリップ式NDフィルターも役立ちます。画質を突き詰めると限界はあるものの、日中の滝や噴水で水をなめらかにしたり、都会の交差点で人混みを薄く消したりと、アイデア次第で十分遊べます。まずはアプリ+三脚だけで夜景から挑戦し、慣れてきたらNDフィルターにも手を伸ばしてみましょう。
シーン別スローシャッターの実践アイデア

スローシャッターの基本を押さえたら、次は「どこで試すか」です。撮影場所をイメージできていると、現地で迷わず設定を変えられるようになり、習得スピードも上がります。ここでは、すぐに試しやすい代表的なシーンをピックアップします。
風景・夜景・光跡で狙いたいポイント
まず挑戦してほしいのが、滝や渓流、海辺などの水がある風景です。曇りの日や日陰を選ぶとコントラストが抑えられ、白飛びしにくくなります。シャッタースピードを1秒、2秒、5秒…と変えていくと、水の表情がどんどん変化していく様子が分かり、撮っていても楽しくなってくるはずです。
夜景では、車の多い交差点や高架道路の見える歩道橋が狙い目です。シャッタースピードを5〜10秒程度に設定して撮ると、ヘッドライトとテールライトが連続した線として写り、街のリズムを視覚化したような写真になります。歩道橋の手すりに三脚を固定し、構図をきっちり決めてから何枚か撮り比べてみましょう。
観覧車や遊園地のアトラクションも、スローシャッターとの相性が抜群です。回転する物体に対して長時間露光を行うと、形そのものが光の模様に変わっていきます。安全に撮影できるポジションを確保したうえで、シャッタースピードを変えながら遊んでみてください。
日常スナップにスローシャッターを混ぜる発想
特別な場所に行かなくても、日常のなかにはスローシャッターと相性の良い被写体がたくさんあります。例えば、駅のホームで行き交う人、雨の日に傘を差して歩く通勤客、エスカレーターやエレベーターの動きなど、すべて「時間とともに変化するもの」です。
普段はオートで撮っているシーンでも、意識してスローシャッターを混ぜてみると、同じ場面でもまったく違う印象になります。帰り道の交差点を毎日1/10秒で撮ってみる、駅のホームで1秒露光に挑戦してみるといった「小さなルール」を自分に課してみるのもおすすめです。
慣れてくると、「今日は空がきれいだから、雲の流れを長時間露光で撮っておこう」といった発想が自然に出てくるようになります。そうなればもう、スローシャッターはあなたの表現の標準装備と言っていいでしょう。
よくある失敗とスローシャッターのリカバリー術
スローシャッターはチャレンジするほど失敗カットも量産されます。ただ、その多くはパターン化されていて、原因さえ分かればすぐに改善できます。ここでは特に起こりやすいトラブルと、現場での簡単な対処法を整理しておきましょう。
写真全体がブレる・ピントが甘いとき
画面全体がユラユラしている場合は、ほぼ確実にカメラブレです。三脚の脚を伸ばしすぎていたり、風に煽られていたりと、物理的な揺れが原因になっていることが多いです。脚を短くして重心を下げる、足元をしっかり地面に押し付ける、レリーズやタイマーでシャッターに触らないようにするといった対策が有効です。
ピントが甘いときは、暗さやNDフィルターの影響でAFが迷っている可能性があります。ピントを合わせたい場所で一度AFを合わせたら、すぐにMFに切り替えて固定する習慣をつけてみてください。ライブビューの拡大表示やピーキング機能を使えば、暗所でもピントの山を追いやすくなります。
それでも失敗が続くようなら、焦点距離を短くして広角寄りで撮るのも一つの手です。広角レンズは同じブレ量でも見た目の影響が小さく、スローシャッターの練習にはうってつけの画角です。
白飛び・ノイズ・色かぶりへの対処
昼間の長時間露光で画面が真っ白になるのは、露光時間に対して光が多すぎるのが原因です。ISOを最低にする、絞りをある程度絞る、NDフィルターで光量を落とす、という順番で対処していきましょう。どうしても抑えきれない場合は、時間帯を夕方や曇りにずらすだけでも格段にコントロールしやすくなります。
夜景や星空では、露光時間を伸ばすほどセンサーの熱によるノイズが増えます。長秒露光ノイズリダクションを活用したり、複数枚を撮って比較明合成やスタック処理を行うと、ザラつきを抑えつつディテールを残せます。画質を最優先したい作品撮りでは、撮影枚数は減ってもこうしたひと手間を加える価値があります。
街灯や看板の光が強い場所では、画面の一部が極端に色かぶりすることもあります。構図を少し変えて光源を画面の端に寄せる、レンズフードや手で余計な光を遮るだけでも改善することがあります。撮影後の現像でホワイトバランスや色相を微調整しつつ、自分の好みに寄せていきましょう。
スローシャッターのまとめ
スローシャッターは、シャッタースピードを意図的に遅くすることで、時間の流れや光の軌跡を一枚の写真に閉じ込める撮り方です。難しそうに見えても、モード選び・三脚の使い方・シャッタースピードの目安さえ押さえれば、誰でもすぐにチャレンジできます。まずは1/10秒前後から始め、1秒・5秒と段階的に伸ばしながら、自分の機材でどこまで表現できるか試してみましょう。夜景ポートレートやスマホアプリも活用すれば、日常の風景が一気にフォトジェニックに変わります。この記事を読み終えたら、ぜひカメラやスマホを手に、近所の交差点や水辺で数カットだけでも撮ってみてください。スローシャッターの楽しさが、きっとすぐに実感できるはずです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
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