収差とは何か。レンズの収差の種類・原因・直し方を最短理解

収差とは何か。レンズの収差の種類・原因・直し方を最短理解

撮って出しが眠い、周辺が流れる、輪郭に紫や緑がにじむ―その主な要因のひとつが「レンズの収差」です。この記事では、収差とは何か意味を把握し、場面別にどう捉え、どう活かすかまでをまとめました。最新の補正トレンドやワークフローも押さえ、今日の撮影から効く対策を導入できるように案内します。

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みんカメ編集部
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この記事のサマリー

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「収差」とは理想結像からのズレで、画質低下の主因

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種類は単色収差(5種)と色収差(2種)を押さえれば十分

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絞り・光学設計・ソフト補正で三段構えの対策が王道

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ミラーレス時代は「電子補正前提」設計が増加

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現場では症状別に即応:色フリンジ/周辺流れ/歪みを切り分け

収差とは:最短で掴む定義と実害

収差とは何か。レンズの収差の種類・原因・直し方を最短理解

「収差(しゅうさ)」とは、カメラのレンズを通った光が理想どおりに一点に集まらず、わずかにズレてしまう現象のことを指します。たとえば、ピントが合っているはずなのに写真全体が少し眠く見えたり、四隅が流れたようにボケてしまったり、輪郭に紫や緑の色がにじんだりした経験はないでしょうか。それらの多くは、この収差が原因です。

もう少しイメージしやすく言えば、虫めがねで光を一点に集めようとしたとき、レンズの形やガラスのクセのせいで光が少し散ってしまう、そんな状態に近いです。本来、レンズの役割は被写体の光を正確にセンサー上に結像させることですが、わずかなズレがあると点は点として結ばれず、にじんだり歪んだりしてしまうのです。結果として写真のコントラスト(明暗のキレ)も低下します。

収差のサイン

収差のサインは、日常の撮影でも意外と簡単に見つけられます。夜景で街灯の光が丸く滲む、星が三角形に伸びる、看板の白文字の縁に色が付く、建物の柱が曲がって写る。こうした現象は「光が理想の位置に届いていない」サインとなりますす。

レンズの収差が発生する要因

原因は主に2つあります。ひとつはレンズの形によるズレで、これを「単色収差」と呼びます。球面収差やコマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差などがこれに含まれます。もうひとつはレンズのガラスが光の色(波長)によって屈折率が異なるために、色ごとに焦点がズレる「色収差」です。つまり、物理的な形の問題と、ガラスの性質の問題が重なって起きる現象なのです。

レンズの収差への向き合い方

収差は恐れるものではありません。少しの工夫で大きく改善できます。撮影時に1〜2段絞る、広角端を避けて少しズームする、被写体を中央寄せにするだけでも多くの収差は軽減されます。現像時には、Lightroomやメーカー純正ソフトのレンズ補正機能を使えば歪みや色のズレを自動で修正できます。そして機材選びでは、「非球面レンズ」や「EDレンズ(低分散ガラス)」など、収差を抑える設計を持つものを選ぶと安心です。

要するに、「収差=光のズレ」。それを理解してコントロールできるようになると、写真のキレや色の澄み方が一段と変わります。理屈を知っておくことで、撮影も現像も一歩上の仕上がりを目指せるようになるのです。

収差の種類を一気に把握:単色収差と色収差

定義で説明した通り、レンズの収差は大きく二系統あります。レンズ形状に起因する「単色収差(球面・コマ・非点・像面湾曲・歪曲)」と、材質の分散に起因する「色収差(軸上・倍率)」です。症状の出方と対処が異なるため、分類で覚えると現場での判断が速くなり詳しく解説します。

単色収差(ザイデルの5収差)

球面収差は開放で像が柔らかく、点がにじみます。コマ収差は周辺の点が彗星形に伸び、非点収差は点が線に割れます。像面湾曲はピント面が曲がり、中心と隅が同時に合いません。歪曲収差は形そのものが樽型・糸巻型に変形します。

撮影影響はそれぞれ異なります。夜景や星景では球面・コマ、広角風景では非点・像面湾曲、建築では歪曲が致命的になりやすい、と覚えるとレンズ選びと設定の優先順位が明確になります。

色収差(軸上・倍率)

軸上色収差はピント前後で紫や緑のにじみが出るタイプ。大口径ほど開放で目立ちます。倍率色収差は周辺のエッジに赤や青の縁取りが出るタイプで、拡大表示で顕著に見えます。

対処は分けて考えます。軸上は絞りや光学設計の影響が大きく、後処理での完全除去は難題。倍率色収差は絞りでは改善せず、ソフトでの自動補正が有効です。

撮影で抑える:絞り・構図・距離の実践Tips

撮影シーンで即効性が高いのは「適度に絞る」こと。球面・コマ・非点・像面湾曲の多くは絞ると改善します。一方、歪曲と倍率色収差は絞っても変わらないので、構図や後処理で補います。被写体距離と画角の選び方も効きます。

絞ると何が減る?何が減らない?

開放は周辺の極端な光線も通るため、球面・コマなどが出やすくなります。1〜2段絞ると中心部の良像域が増え、画面全域が整います。ただし歪曲や倍率色収差は絞り非依存で、F値での改善は期待できません。

小絞りでは回折の影響で解像が低下し始めます。被写体の細部とシャッター速度、ISOとの兼ね合いで「適切な中間絞り」を探すのが実戦的です。

距離と画角のコントロール

周辺の流れや非点が気になるときは、被写体を画面中心に寄せ、撮影距離を取りましょう。広角で寄るほど周辺の崩れは目立ちます。撮影位置を半歩動かすだけでも改善することがあります。

歪曲が致命的な建築では、直線が画面端に極端な角度で当たらないよう立ち位置や水平を調整します。どうしても残る歪みは後述のプロファイル補正を前提に撮ると効率的です。

光学設計で抑える:非球面・低分散・高屈折

レンズ自体の力で収差を減らす王道は、非球面や低分散ガラスの投入です。非球面は球面収差やコマ、歪曲補正に有効で、ED/UD/蛍石などの低分散材は色収差低減に有効です。設計では複数枚の役割分担で総合的に抑え込みます。

非球面が効く領域

球面レンズは周辺光線の焦点が前後にズレやすく、点像が肥大します。非球面は周辺ほど曲率を変え焦点位置を揃えることで球面収差を抑制し、配置次第で歪曲にも有効です。

ただし一枚で万能ではありません。複数の非球面と他のレンズ群の組み合わせで全体バランスを取るのが実際の設計です。生産方式(GMo/PMo等)も歩留まりと性能に影響します。

ED/UD/蛍石で色収差を叩く

材質の分散差に起因する色収差には、低分散ガラスや蛍石が有効です。焦点位置の色ズレを小さくでき、開放の軸上色収差を軽減します。望遠域や大口径で効果を体感しやすい領域です。最新のレンズでは、低分散と非球面の併用、さらにコーティングでコントラストを底上げする総合対策が一般的です。

ソフトで直す:レンズプロファイルとワークフロー

現代のワークフローでは、歪曲収差と倍率色収差は「プロファイルで自動補正」が基本です。カメラ内や現像ソフトの補正データを用い、撮影〜編集のどこで適用するか決めるだけで、多くのケースが解決します。

歪曲・倍率色収差は自動補正が基本

Sony Imaging Edge Desktopを含む主要現像ソフトは、歪曲・倍率色収差・周辺減光の補正に対応しています。レンズに合致したデータがあれば自動適用が可能で、建築や商品撮影での直線維持に有効です。

等倍確認で周辺の赤/青の縁取りが消えているか、直線が真っ直ぐに戻ったかをチェックしましょう。プロファイルが無いレンズでは手動調整が必要です。

RAW現像でのプロファイル活用

RawTherapeeはLensfunやAdobe LCPに対応し、機種/レンズ情報から自動で補正パラメータを適用できます。データベース更新や手動選択での適合も可能です。

自動補正に過信は禁物です。強い歪曲補正は幾何変換と再サンプリングを伴うため、画角の実質的な狭まりや周辺の解像低下を招き得ます。自動+手動の併用で副作用を最小化しましょう。

具体例で理解:RF16mm F2.8と「電子補正前提」設計

ミラーレス時代は小型化の代わりに、電子補正前提の設計が増えています。Canon RF16mm F2.8 STMは、The Digital Pictureの検証で「カメラ内およびDPPで歪曲補正が強制される」と報告されています。

カメラ内強制補正の実態

RF16mmでは、ボディ側メニューで歪曲補正のオン/オフ操作が制限される事例が報告され、DPPによる現像でも歪曲補正が強制適用されるとされています。

このタイプは「補正前提」で最終画質と小型・低価格を両立させる設計思想です。ユーザー側はプロファイル前提で撮影し、必要に応じて追加調整すれば実運用上の問題は少なくなります。

“素の像”を見てみると

サードパーティ現像環境では、未補正RAWの表示や補正の有無選択が可能な事例があり、RF16mmの強い樽型歪曲を未補正で確認した上で適切な補正量を決められます。

超広角での携行性や価格を重視するユーザーにとっては合理的な選択肢です。現場では「補正ありき」で撮影し、後段での微調整に時間を配分する運用が効率的です。

ジャンル別の最適化:風景・ポートレート・建築・動画

被写体ごとに気を付ける収差は違います。風景では周辺のシャープネス、ポートレートではボケ質、建築では直線の忠実度、動画ではワイド端での歪みや色ズレがポイント。目的に応じて「撮り方」と「補正」を配分しましょう。

風景:周辺の均一性を最優先

像面湾曲や非点収差が残ると、隅の草木や建物が甘くなります。1〜2段絞り、被写体を中央寄せで撮り、必要に応じて周辺に重要要素を置かない構図で逃がすと安定します。

広角ズームでは設計上ワイド端で収差が増えやすい個体があり、少しズームすると改善する場合があります。周辺のわずかな流れは後段の局所シャープやマイクロコントラスト調整で補えます。

ポートレート:ボケ質と収差バランス

軸上色収差が強いと前後ボケにマゼンタ/グリーンの色づきが出ます。背景の点光源が二線気味になるときは、開放から半段〜1段絞るだけで改善することがあります。

球面収差がわずかに残るレンズは柔らかい描写を生みます。肌の質感重視なら、補正し過ぎない描写をあえて選ぶのも一策です。等倍で気になる色づきは現像時に軽減します。

建築/動画:歪曲と倍率色収差の管理

建築の直線は歪曲収差の影響が大きい領域です。三脚で水平・垂直を出し、プロファイル補正を常時オンにします。動画ではパンで歪みが目に付くため、広角端を避ける運用も効きます。

周辺の赤/青の縁取りは倍率色収差のサイン。主要現像ソフトの自動補正を使えば短時間で改善可能なので、撮影段階では露出と構図に集中し、後段で確実に処理しましょう。

機材選びの指針:MTF・実写・レビューの読み方

収差の少ないレンズ選びは、MTFの形と実写の筋の通り方で判断します。中心と周辺の落差、サジタル/メリジオナルの分離が小さいほど均一。レビューでは点光源、格子、白黒境界の等倍サンプルを優先して確認しましょう。

公式MTFの読み方

MTFとは、「Modulation Transfer Function(変調伝達関数)」の略で、レンズの解像力(どれだけ細かい模様を正確に写せるか)を数値で示した指標です。メーカーのレンズ仕様ページなどでよく見かける、波形グラフのようなものがそれに当たります。

MTFは理論や開放値での傾向を掴む指標です。中央から周辺への低下が緩やかで、S/Mの乖離が小さい図は周辺の乱れが少ない目安になります。複数焦点域のMTFが公開されているズームは、その差分も見比べましょう。ただしMTFは万能ではありません。コマや像面など実写条件で出る収差は、開放からの描写と数段絞った状態も含め、作例で最終判断するのが堅実です。

サンプルのどこを見るか

夜景の点光源は球面/コマ、格子は歪曲、白黒の境界は色収差の検出に向きます。画面中央と四隅を等倍で比較し、流れや色縁取りの度合いを定量的に見ていきます。

レビュー本文より画像に現れるクセを優先。メーカーを跨いで同条件の作例を集めて比較すると、机上のスペック差より実用判断に直結します。

トラブルシューティング:色フリンジ/周辺流れ/歪みの現場対処

症状から逆引きするのが素早い対策につながります。色のにじみは色収差、周辺の流れは非点や像面、形の歪みは歪曲の疑い。現場でできることと、後処理に任せることを仕分けて対処しましょう。

色フリンジが出たら

ピント前後の紫/緑は軸上色収差の典型。半段〜1段絞って様子見し、被写体と背景の距離を調整します。周辺エッジの赤/青は倍率色収差なので、撮影はそのまま、現像で自動補正が近道です。

逆光や強い白エッジは症状が誇張されやすいので、角度と露出で緩和します。後処理では色収差補正に加え、ハイライトの彩度低下で視覚的な色づきを控えめにする方法もあります。

周辺が流れるとき

非点収差や像面湾曲が疑わしいときは、被写体を中央寄せにし、1〜2段絞ってから再確認。ズームはワイド端を避け、わずかに焦点距離を伸ばすと収まる場合があります。

それでも厳しい場面では、撮影位置を変えて周辺の重要度を下げるか、複数カットを合成して“美味しい”部分だけを使う方法も現実的です。

歪みを最小にしたい

建築や商品では直線管理が最優先。三脚で水平・垂直を取り、プロファイル補正を常用します。残るわずかなクセは手動のグリッド合わせで整えます。

撮影段階では、直線が端で斜めに当たらない立ち位置を選び、広角端を避ける判断も有効。後段のトリミング前提で周辺マージンを残しておくと、仕上げが楽になります。

まとめ

収差とは、レンズで生じる「理想からのズレ」で、画質を左右する要素です。単色収差と色収差の基本を押さえ、現場では適度に絞り、構図と距離でリスクを避け、仕上げでプロファイル補正を掛ける。この三段構えが王道です。ミラーレス時代は電子補正前提の製品も増えています。今日からは、夜景の点光源や建物の直線、白地のエッジを等倍で確認する習慣を付けてみましょう。症状を見分けて一手ずつ対処すれば、撮影する写真はよりクリアになります。


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